「乳」の文字を見るたびに、原材料表示を何度も確認してしまう—。お子様が牛乳・乳製品アレルギーの場合、親御さんにとって日々の食品選びは大きな悩みの種です。
子どもの食物アレルギーの原因として、牛乳は卵に続いて2番目に多いとされています。アレルゲンを厳密に避けつつも、「免疫力を高めたい」「腸内環境を整えてあげたい」という思いから、乳酸菌への関心は高まっているでしょう。
しかし、「乳酸菌飲料は大丈夫?」「乳化剤って乳成分?」など、「乳」とつく表示には誤解が多く、判断に迷うことも少なくありません。
この記事では、牛乳アレルギーの基本から、乳製品と誤解されやすい表示の正しい見分け方までを専門的に解説します。そして、牛乳由来ではない特定の米由来乳酸菌が、アレルギーで悩む方々の体質改善にどのような可能性を示唆しているのかを深掘りします。
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牛乳アレルギーの基礎知識:原因と「乳糖不耐症」との違い
まずは、牛乳アレルギーの原因物質と、混同しやすい「乳糖不耐症」との違いを明確に理解することが、正しい食品選びの第一歩です。
牛乳アレルギーの真の原因は「タンパク質」
牛乳アレルギーの多くは、牛乳に含まれるタンパク質(カゼインやβ-ラクトグロブリンなど)が原因で、免疫システムが過剰に反応して症状を引き起こします[1]。
- カゼイン: 牛乳タンパク質の約80%を占めます。熱や発酵(ヨーグルト化)にも非常に安定しているため、加工食品でもアレルゲン性が残存しやすいです。
 - β-ラクトグロブリン: 乳清タンパク質の主成分です。カゼインよりは熱に弱いですが、主要なアレルゲンの一つです。
 
症状は、皮膚症状(湿疹、じんましん)、消化器症状(嘔吐、下痢)、呼吸器症状(喘息)など多岐にわたり、重篤な場合はアナフィラキシーショックに至ることもあります。特に乳児期に発症することが多いですが、学童期以降、成人まで遷延するケースもあります[1]。
アレルギーとは異なる「乳糖不耐症」
乳糖不耐症、ラクターゼ
牛乳を飲むと腹痛や下痢、お腹の不快感が生じる場合、それは牛乳アレルギーではなく、「乳糖不耐症」の可能性が高いです。
- メカニズム: 乳糖不耐症は、牛乳に含まれる糖分である乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」の活性が低下している状態です。消化不良により、腹部膨満感や下痢といった消化器系の不快な症状が現れます。
 - アレルギーとの決定的な違い: アレルギーが免疫システムの異常であるのに対し、乳糖不耐症は消化酵素の不足によるものです。このため、乳糖を分解・除去した牛乳であれば、症状を気にせず飲めることが多いのが特徴です。
 
「乳」の表記に惑わされない専門知識
食品の原材料表示に記載される「乳」の文字は非常に紛らわしいものです。厚生労働省の定めるアレルギー表示制度に基づき、専門的な知見から「大丈夫なもの」と「避けるべきもの」を解説します[2]。
牛乳・乳製品アレルギーの方が「避けるべき」原材料
これらは、牛乳由来のタンパク質を多く含むため、摂取を避ける必要があります。
牛乳・乳製品アレルギーでも「摂取可能」な紛らわしい表示
<誤解されやすいが乳成分を含まない表示>
これらは、名称に「乳」が付きますが、牛乳とは無関係であり、アレルゲンとなる乳タンパク質は含まれていません。
- 乳酸菌: ヨーグルトやチーズだけでなく、味噌、キムチ、ぬか漬けといった植物由来の発酵食品にも含まれる細菌の総称です。菌そのものには乳成分はありません。
 - 乳化剤: 大豆由来のレシチン、卵黄由来のレシチン、グリセリン脂肪酸エステルなどから作られる添加物であり、乳成分は含まれません。
 - 乳酸カルシウム / 乳酸ナトリウム: 化学的に合成される物質であり、牛乳由来の成分は含まれていません。カルシウム補給や保存料として使用されます。
 
重要なのは、「乳酸菌」そのものは大丈夫でも、「乳酸菌飲料」は乳製品を含む場合があるという点です。摂取可能な乳酸菌源を選ぶ際は、牛乳を原料としていない発酵食品やサプリメントを選ぶ必要があります。
アレルギー対策の新しい光:米由来乳酸菌(LK-117)の可能性
牛乳アレルギーを持つ方にとって、アレルゲンを気にせず免疫や腸内環境をケアできる乳酸菌は特に価値が高いといえます。ここで、日本の食文化に根ざした特定の米由来乳酸菌に注目が集まっています。
日本人に馴染み深い「米由来」乳酸菌の特長
植物由来、胃酸耐性、日本酒「生酛」
特定の米由来乳酸菌(LK-117)は、日本の伝統的な日本酒の製法である「生酛(きもと)」から分離された植物由来の乳酸菌株です。
- アレルゲンフリー: 牛乳を原料としないため、牛乳アレルギーの心配がなく摂取できます。
 - 高い親和性: 日本人は古くから米を使った発酵食品(味噌、甘酒など)を通じて植物性乳酸菌を摂取しており、日本人の腸内環境と高い親和性を持つことが示唆されています。
 - 耐性の高さ: 漬物や酒造りの過酷な環境で育つ植物性乳酸菌は、胃酸や胆汁に強く、生きたまま腸まで届く耐性が高い株が多いことも特長です。
 
専門的な知見:米由来乳酸菌による免疫バランスの調整
神戸大学・兵庫県工業技術センターとの共同研究において、この特定の米由来乳酸菌(LK-117)は、アレルギー症状に悩む方々の体質をサポートする可能性が示唆されています[4]。
<共同研究で示唆された知見>
- IgE抗体の調整: アレルギー反応のトリガーとなるIgE抗体の過剰な産生を穏やかにする可能性が示唆されています。
 - Th1/Th2バランスの調整: アレルギー体質の多くで見られるTh2優位(過剰なアレルギー反応)を緩和し、免疫のバランスを正常に近づける方向に働く可能性が示唆されています。
 
アレルギーの原因である牛乳タンパク質を避けることは当然ですが、同時にアレルギー体質そのものの根本に働きかける「内側からのケア」を取り入れることは、子どもの健やかな成長をサポートする上で非常に有効なアプローチと言えるでしょう。
親御さんが抱えるアレルギーと乳酸菌の疑問
乳酸菌サプリを選ぶ際、牛乳アレルギーの注意点は何ですか?
A. 最も重要なのは、サプリメントの原材料表示を隅々まで確認することです。「乳酸菌」そのものは大丈夫ですが、乳酸菌を安定させるための培地や賦形剤として乳由来成分(脱脂粉乳、乳糖など)が使用されている場合があります。特に米由来や大豆由来など、牛乳を原料としないことが明記されている製品を選ぶと安心です。
牛乳アレルギーは成長とともに治りますか?
A. 多くの小児食物アレルギーは、成長とともに耐性を獲得するケースが多いです。牛乳アレルギーも例外ではなく、2歳頃までには約50%、学童期までに約80%が自然に治癒すると言われています。しかし、耐性の獲得時期には個人差があり、成人まで遷延することもあるため、自己判断せず、必ず医師の指導のもとで定期的な検査を行いましょう[1]。
牛乳アレルギーなのに、ヨーグルトは食べられますか?
A. いいえ、通常は食べられません。牛乳アレルギーの原因であるタンパク質(カゼインなど)は、ヨーグルトのように発酵させてもアレルゲン性はほとんど変わりません。牛乳が飲めないのにヨーグルトは大丈夫な場合、牛乳アレルギーではなく乳糖不耐症の可能性が高いです。
「乳化剤」「乳酸菌」は牛乳アレルギーでも摂取できますか?
A. はい、これらは基本的に摂取可能です。「乳酸菌」は細菌の総称であり牛乳とは無関係です。「乳化剤」も大豆や卵黄など牛乳以外の原料から作られる添加物です。ただし、「乳酸菌飲料」は乳製品が使われることが多いため、原材料の確認は必須です。
まとめ|牛乳アレルギーでも諦めないインナーケア
牛乳アレルギーを持つお子様の食品選びは、常に緊張が伴うものです。しかし、「乳」という文字に惑わされることなく、正しい知識をもってアレルゲンフリーの食品を選べるようになれば、食生活の幅は大きく広がります。
アレルギー体質を内側からサポートしたいと願うなら、牛乳成分を含まず、日本人の体質に馴染み深い特定の米由来乳酸菌を試してみるのがおすすめです。科学的根拠に基づいた乳酸菌の力を、お子様の健やかな未来のために、安心安全なインナーケアとして習慣にしてみましょう。
【重要なお知らせ】
※本記事は、一般的な健康情報を提供するものであり、特定の成分や商品の効能・効果を保証するものではありません。また、医師の診断・治療を代替するものではありません。
食物アレルギーの診断、治療、および食事指導については、必ず医師や管理栄養士にご相談の上、適切な指示を受けてください。
主な参考文献・情報源
- [1] 伊藤 節子. 子どもと大人の牛乳アレルギーと対応について. 生活協同組合研究, 2019; 486: 30-36. (同志社女子大学 特任教授)
 - [2] 厚生労働省. 食品のアレルギー表示について.
 - [3] 日本小児アレルギー学会. 食物アレルギー診療ガイドライン2016.
 - [4] 神戸大学・兵庫県工業技術センター・菊正宗酒造株式会社 総合研究所 共同研究成果より(IgE抗体産生抑制作用、Th1/Th2バランス調整作用が示唆されています)。
 
