今年もインフルエンザが各地で流行しています。子供がいるご家庭では、インフルエンザ対策として、予防接種に手洗いうがい、インフルエンザに良いとされるヨーグルトなどを積極的に摂取している方も多いのではないでしょうか。
さて、そんなインフルエンザ予防で注目されているのが、免疫の司令塔を活性化する唯一の乳酸菌。免疫の司令塔を活性化することでインフルエンザ予防への効果が期待されています。
そこで、今回は、
「免疫の司令塔を活性化するとはどいうことなのか?」
「一般的な乳酸菌とは何が違うのか?」
をわかりやすく解説していきます。
免疫活性化作用でインフルエンザに注目が集まる乳酸菌
まずは、乳酸菌とはどういったものなのか?
厚生労働省が運営する生活習慣病予防のための健康情報サイト「「e-ヘルスネット」では、乳酸菌について以下のように記載されています。
乳酸菌(にゅうさんきん)
発酵によって糖から乳酸をつくる嫌気性の微生物の総称。腸内で悪玉菌の繁殖を抑え、腸内環境を整える。
発酵によって糖類から乳酸を作り出す性質を持つ微生物のことを指します。人体に有益な菌のため「善玉菌」とも呼ばれます。
食品としては、ヨーグルト・チーズ・漬け物・日本酒など発酵食品の製造に使われています。ヨーグルトなどでよく知られているビフィズス菌も乳酸菌の一種です。乳酸菌は腸内で大腸菌など悪玉菌の繁殖を抑え、腸内菌のバランスをとる役割を果たしています。そして便通の改善だけではなく、コレステロールの低下や免疫力を高めがんを予防するなど、さまざまな働きがあると言われています。最近ではピロリ菌を排除するなど、特徴のある機能を持つ乳酸菌も研究されています。
乳酸菌などの腸内環境を整える微生物のうち、生きて腸に到達できる有用な微生物を特にプロバイオティクスといいます。またオリゴ糖などその栄養源となりプロバイオティクスの増殖を助けるものをプレバイオティクスといいます。
乳酸菌は、糖類を分解して乳酸を産生する細菌類の総称で、これまでに発見された乳酸菌の種類は約400種類にも及ぶと言われています。
乳酸菌は、プロバイオティクスの代表として整腸作用があることは知られていますが、最近では、免疫活性化作用に注目が集まり、感染症やアレルギーなど様々な疾患に対する予防効果の研究・検討が各機関で進められ、機能性を強調する新商品が次々と開発されています。
免疫の司令塔を活性化することでインフルエンザ予防への効果が期待されている乳酸菌もそのひとつです。
乳酸菌の免疫活性化作用について
私たちを取り巻く環境には、ウイルス、細菌、カビ、寄生虫などの病原体や、花粉、ハウスダストなどの物質(異物)数多く存在し、免疫は、これらの異物から体を守る仕組みです。
免疫には、体内に侵入してきた異物を認識して排除する「自然免疫」と、侵入してきた異物の情報をリンパ球が認識しその情報に基づいて特定の異物を排除する「獲得免疫」があります。
※リンパ球・・・免疫系における白血球のひとつ。リンパ球の主要な種類には、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、T細胞、B細胞がある。
「自然免疫」は、ウイルスや細菌などの異物が体内に入ってくると、真っ先に駆けつけてやっつける免疫反応のことで、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞といった免疫細胞がそれにあたります。そして、それとは別に、樹状細胞には侵入してきた異物の情報を伝えて獲得免疫の働きを活性化させる役割もあります。
「獲得免疫」は、自然免疫から伝えられた異物の情報をもとに、異物に応じた攻撃を学んで記憶します。そして、次に同じ異物が侵入してきたときに、その免疫力を発揮します。この獲得免疫の仕組みを活用したインフルエンザの予防法が、インフルエンザワクチンの予防接種です。
乳酸菌のプロバイオティクス、つまり腸内環境を整えることによる免疫活性化作用も期待されていますが、現在、注目が高まっている乳酸菌の免疫活性化作用というのは、乳酸菌が直接、免疫細胞に作用して免疫細胞を活性化するというものです。
大きな違いは、プレバイオティクスが腸内環境を通じて作用するのに対して、免疫細胞に直接作用するという点です。また、免疫活性作用は全ての乳酸菌にあるわけではなく、研究結果などで証明されている乳酸菌はまだ少ないのが現状です。
新しい乳酸菌 → 乳酸菌が直接作用
免疫の司令塔を活性化する乳酸菌について
乳酸菌には、免疫細胞に直接作用して免疫細胞を活性化するものがあるということはわかりました。
では、具体的に免疫の司令塔を活性化するというのはどういうことなのでしょうか。
免疫の司令塔「樹状細胞」
樹状細胞とは、その名の通り樹木のような状態の細胞のことです。樹状細胞は、全身に分布していて免疫応答にとって重要な細胞であると考えられています。
病原微生物やがんなどの異物を認識した樹状細胞は、異物の情報をT細胞に提示することにより、獲得免疫反応を起こす、抗原掲示の役割があります。また、樹状細胞には、過剰な免疫反応が起こらないように免疫寛容を誘導・維持する役割あります。
つまり、樹状細胞は免疫細胞の司令塔のような役割を担っています。
そして、世界で初めて、乳酸菌によって免疫の司令塔の一つプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を直接活性化することがヒトで確認されました。この作用が確認されている乳酸菌はまだ、これだけです。
論文化されている乳酸菌の中でも唯一ということで、注目の乳酸菌です。
免疫の司令塔を活性化するとどうなるのか?
免疫の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)が活性化されると、NK細胞・キラーT細胞・B細胞・ヘルパーT細胞など、細菌やウイルスを攻撃する免疫細胞が活性化されます。それによって、インフルエンザの予防にも効果が期待できるということになります。
他の免疫細胞を活性化させる乳酸菌と何が違うのかというと、現時点で他の疫細胞を活性化させる乳酸菌のほとんどは、NK細胞を活性化するなど一部の免疫細胞しか活性化するまでしかわかっていません。免疫の司令塔が活性化されることで、免疫全体が活性化され、一部の免疫細胞を活性化するよりも、さらに細菌やウイルス感染の予防が期待できるということです。
本当に唯一の乳酸菌と言えるのか??
実際には、現時点で免疫の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)が活性化することが論文で証明されている唯一の乳酸菌ということで、今後、乳酸菌の研究が進めば、ほかの乳酸菌にも同じような機能が発見され、唯一とは言えなくなる可能性はあるかもしれません。
しかしながら、論文化するまでには、膨大な研究時間と費用がかかるのは確かです。その熱意には敬意に値して当然のことだと思います。このことで、さらに乳酸菌に注目が集まり、多くの人に乳酸菌の魅力が伝わるきっかけになればいいと思います。
進化系乳酸菌でマクロファージを活性化
菊正宗が発見した進化系乳酸菌LK-117には、マクロファージに作用しインターロイキン-12の産生を促進することにより免疫バランスを整える働きがあると考えられます。
樹状細胞とマクロファージの違い
- 樹状細胞
- マクロファージ
樹状細胞は、異物を自分の中に取り込み、その異物の特徴を他の免疫細胞に伝える働きを持ちます。実際には、異物を取り込んだ樹状細胞がリンパ節などのリンパ器官へ移動し、T細胞やB細胞などに異物の情報を伝えることで、それら免疫細胞を活性化させ、活性化されたT細胞やB細胞が、異物を攻撃します。
マクロファージは、からだの中に侵入してきた異物を発見すると、自分の中にそれを取り込んで消化します。また、一部のマクロファージは、異物の特徴を細胞表面に出すことで、外敵の存在を他の免疫細胞に伝えます。 そのほかに、TNF-α、インターロイキン、インターフェロンなど、主に免疫細胞を活性化させるサイトカインという物質産生にも関与しています。
マクロファージも樹状細胞と同じように、免疫の中では重要な役割があります。
マクロファージ → 免疫細胞の監督
免疫バランスを整えることで、免疫が正常に働きアレルギー体質の改善や、インフルエンザの予防にも効果が期待されています。
このように、乳酸菌には種類があり、それぞれ機能が異なります。各企業が研究を積み重ね商品化しています。
インフルエンザ予防にはどの乳酸菌がいいの?
インフルエンザに対して効果があるかどうかは、乳酸菌を摂取した人と摂取しない人とで発熱や咳の症状、罹患者数がどう違うかを比較するデータが多く、メカニズムの解析までしているものは少ないため、どれがいいと断言することはできません。
しかし、乳酸菌を含めたプロバイオティクスによる感染症予防については、エビデンスが十分に集積されていないため世界的にはまだ推奨されていないが、日本の医学界の中では少しずつ評価が高まっているのも事実です。
乳酸菌には、薬のような即効性はありませんが、副作用がないのでプロバイオティクスや特別な機能を期待して摂取するのがいいと考えます。そこで、乳酸菌を摂取するうえで大切なのは、継続的に飲み続けることです。
免疫というのは、急に変わる物ではないので、継続的に摂取することが結果的に予防につながります。乳酸菌には、ヨーグルトやサプリメント、植物由来や動物由来などさまざまな種類がありますが、自分に合ったものを選んで始めてみるのがいいでしょう。
まとめ
今回は、免疫の司令塔に効く乳酸菌について解説しました。このように、乳酸菌には特別な機能が証明されているものがあり、ますます乳酸菌への注目度が高まっています。
乳酸菌ならなんでもいいだろうと思って、乳酸菌を摂取するのではなく、今飲んでいる乳酸菌にはどんな機能があるのかを確認しながら試してみるのもいいかもしれませんね。