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【農学博士の知見】花粉症の症状は飛散量だけ?腸内環境との関係

花粉の飛散量が多い・少ないで症状は変わる?

毎年春が近づくと気になる花粉の飛散量予測。多いと聞くと、「今年は症状がひどくなるのでは…」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。特に、大切なお子さんの花粉症やアレルギー症状に悩む親御さんにとって、日々の対策は切実な問題です。

本記事では、花粉症の症状と飛散量の実際の関係性について、最新の研究や専門家の知見を交えて深掘りします。単なる飛散量だけでなく、免疫バランスを整えるカギとなる腸内環境や生活習慣が、いかに症状の軽重に影響するかを解説。子育て世代の方々が今日からできる、体質改善のヒントをご紹介します。

花粉症の「症状の重さ」は飛散量だけで決まるのか?

花粉飛散量と症状悪化の傾向:相関はあっても全てではない

「花粉が多ければ症状も重い」—これは一概には言えませんが、ある程度の相関関係があることが複数の研究で示唆されています。

多くの疫学調査では、花粉の飛散量が増加するほど、花粉症の症状も悪化する傾向が確認されています。これは、体内に侵入するアレルゲン(花粉)の総量が増えるため、免疫細胞が過剰に反応しやすくなるからです。

しかし、注目すべきは、飛散量に関わらず症状が重くなる人がいるという事実です。これは、花粉症の発症や重症化が、花粉量という外的要因だけでなく、個々人の免疫系の感作状態(アレルギーを起こしやすい体質)に大きく左右されることを示しています。

小児の花粉症が増加:抗体の「蓄積」と環境要因

花粉症は、体内に侵入した花粉を異物(抗原)と認識し、それを排除しようとする過剰な免疫反応(アレルギー反応)です。

体内で花粉に対応するためのIgE抗体が一定量に達すると花粉症を発症しますが、近年、花粉の飛散量が増加傾向にあるため、この抗体が閾値に達するまでの期間が短くなり、幼少期に花粉症を発症する小児が増加していることが報告されています。

厚生労働省の資料によると、日本におけるスギ花粉症の有病率は約3割にのぼり、特に30〜50代に多いとされています[1]。花粉症を発症するまでの期間や症状の軽重には個人差があり、その背景には以下の要因が考えられています。

  • 環境要因: 大気汚染、食生活の変化、衛生環境の変化など
  • 内的要因: アレルギー体質の素因、腸内細菌叢の変化
専門家からの視点(農学博士の知見)
「花粉症の発症や重症化は、花粉量という外的要因に加え、個々人の免疫系の感作状態に大きく左右されます。特に、近年注目されているのは、食生活の変化や腸内細菌叢の変化といった環境的要因が、アレルギー体質に傾いた免疫バランスを崩している可能性です。免疫細胞の6割以上が集中する腸内環境を整えることが、花粉への過剰反応を抑える一つの重要なアプローチになると考えられています。」

症状を悪化させる!飛散量以外の見落としがちな要因

花粉症の症状の悪化は、花粉の飛散量以外にも、私たちの生活環境や習慣に深く影響されています。これらは、花粉というアレルゲンに対する体の防御システム(免疫)の働きを乱す要因となるからです。

免疫バランスを乱す4つの生活習慣・環境要因

花粉の飛散量に関係なく症状を悪化させる原因として、以下の生活習慣や環境要因が挙げられます。

  • 環境汚染物質: 大気中の汚染物質(PM2.5、黄砂など)が鼻や喉の粘膜に炎症を起こさせ、花粉アレルゲンの侵入を助長することが示唆されています。
  • ストレス・疲労: 慢性的なストレスや睡眠不足は、自律神経の乱れを通じて、免疫細胞のバランス(Th1/Th2バランス)の乱れを引き起こすことが示唆されています。
  • 食生活の欧米化: 高脂肪・低食物繊維の食事は、腸内細菌叢の多様性を低下させ、免疫細胞が集中する腸の環境を悪化させる可能性があります。
  • 喫煙習慣: 粘膜を刺激し、花粉症の症状を悪化させる要因の一つです。

鍵は「腸内環境」と「免疫調整機能」

人間の体で最大の免疫器官は、腸です。腸には免疫細胞の6割以上が集中しており、この腸内環境の状態が、全身の免疫システムの働きを大きく左右します。

花粉症のようなアレルギー症状は、特定の免疫バランスがアレルギー体質に傾いた状態、すなわち免疫異常によって起こります。腸内環境が整っていると、免疫細胞が正しく働き、このバランスの乱れを抑えることが期待されています。

花粉に負けない体づくり:「乳酸菌」が持つ新たな可能性

花粉症の症状緩和や発症遅延のためには、「花粉との接触を避ける」対策と並行して、体質そのものを見直すことが重要です。そのカギとなるのが、腸内環境を整えるプロバイオティクス、特に乳酸菌の活用です。

研究で示唆される特定の「進化系乳酸菌」の働き

乳酸菌には、腸内環境を改善する一般的なプロバイオティクス効果(整腸作用)がありますが、その種類は様々です。近年、特定の乳酸菌株には、アレルギー体質に傾いた免疫バランスを正常に近づける免疫調整機能が示唆されるものが発見されています。

例えば、神戸大学・兵庫県工業技術センターとの共同研究で発見された米由来の乳酸菌株「LK-117」に関する研究では、一般的な整腸作用に加え、アトピーや花粉症といったアレルギー症状への有用性が示唆されています[2]

この免疫調整機能は、全ての乳酸菌に共通するものではありません。特定の研究で有効性が示唆されている乳酸菌を日々の食生活に取り入れることが、花粉症やアレルギー症状の緩和に向けた、手軽で有効な手段の一つとして注目を集めています。

学術的考察(医師のコメント)
「アレルギー反応は、免疫細胞のうちTh1細胞とTh2細胞のバランスがTh2優位に傾くことで生じやすいと考えられています。特定の乳酸菌株は、このTh1とTh2のバランスを整えることで、アレルギー性鼻炎(花粉症)の症状スコアの改善や、炎症性サイトカインの抑制に寄与する可能性が基礎研究で示唆されています。これは、花粉シーズン前のプレバイオティクスケアとしても期待されるアプローチです。」

毎日の食事で「米由来乳酸菌」を取り入れる

花粉の飛散量に関わらず、日頃から免疫バランスを整えることは、アレルギー体質の改善において非常に重要です。

  • 食生活の改善: 発酵食品や食物繊維を積極的に摂る。
  • 良質な睡眠: 免疫システムを整えるために不可欠。
  • 特定の乳酸菌の継続摂取: 米由来の乳酸菌など、研究で有用性が示唆される乳酸菌を毎日手軽に摂取する。

まとめ:花粉症対策は「外側」と「内側」の両輪で

花粉症の症状は、確かに花粉の飛散量に影響されますが、それ以上にあなたの体質や免疫バランスに大きく左右されます。

  • 外側の対策: 花粉の飛散情報に基づき、マスク・メガネの着用、帰宅時の花粉除去など、花粉との接触を徹底的に避ける。
  • 内側の対策: 免疫細胞が集中する腸内環境を整え、生活習慣を見直すことで、アレルギーに過剰に反応しない体づくりを目指す。

特に、米由来の乳酸菌(LK-117)など、特定の研究で免疫調整機能が示唆されている乳酸菌を取り入れることは、花粉シーズンを快適に過ごすための一歩となるかもしれません。

今後の花粉状況に関する考察:スギ・ヒノキ花粉は増加傾向か

花粉症対策を考える上で、今後の花粉飛散量の動向を把握することも重要です。近年、スギ花粉症の有病率の上昇は国民病とも言われるほどで、花粉抗原の増加がその大きな原因の一つとされています。

【研究報告から見る今後の動向(山梨県での25年間観測データより)】[3]

山梨大学大学院などによるスギ・ヒノキ花粉の観測データ(1998年〜2023年)の分析から、以下の点が示唆されています。

  • スギ花粉の増加傾向: スギ花粉の飛散量は、山間部・市街部どちらの地域においても増加傾向にあり、今後もこの傾向が続く可能性が示されています。
  • ヒノキ花粉の今後: 現在の樹木の齢級面積(成長度合い)の差が影響していると考えられ、今後スギだけでなくヒノキ花粉量も全域で増加に転じる可能性があると考察されています。
  • 気象条件との相関: スギ花粉の飛散量は、前年7月の平均気温・日照時間と強い正の相関があることが確認されています。

この研究は特定地域のデータに基づきますが、広範な地域でスギ・ヒノキ花粉の増加傾向が示唆される中、花粉の量が増える時代だからこそ、自身の免疫バランスを整える「内側」の対策の重要性は増しています。

【参考文献】
本記事は参考情報であり、医師の診断・治療を代替するものではありません。症状の改善には、必ず専門の医療機関にご相談ください。
  1. 厚生労働省 花粉症に関する資料
  2. 神戸大学・兵庫県工業技術センター 共同研究発表資料 他
  3. 島村 歩美 他, スギ・ヒノキ花粉観測25年間の報告―山梨県における地域差と年次推移の検討―, 山梨大学大学院総合研究部医学域臨床医学系耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 他

よくある質問

Q1: 花粉症は遺伝するのでしょうか?

A. 花粉症を含むアレルギー疾患には遺伝的な要因が関わると言われています。ご両親のいずれか、または両方がアレルギー体質の場合、お子さんも発症しやすい傾向がありますが、食生活や環境などの後天的な要因も大きく影響するため、日頃の生活習慣や腸内環境ケアが重要です。

Q2: 子どもの花粉症対策で、すぐにできることはありますか?

A. まずは花粉との接触を最小限にすることが大切です。外出時のマスク・メガネの着用、帰宅時の手洗い・うがい・洗顔を徹底させましょう。また、症状の緩和には腸内環境のケアが重要であるという知見が増えています。特定の乳酸菌を含む食品などを継続的に摂取することも有効な対策の一つとして検討できます。

Q3: 腸内環境を整える乳酸菌は、いつ摂るのが効果的ですか?

A. 乳酸菌は薬ではないため、摂取する時間に厳密な決まりはありませんが、毎日継続して摂ることが最も重要です。食後に摂ることで、胃酸の影響を受けにくくなるとも言われています。特定の研究で免疫調整機能が示唆されている乳酸菌を選ぶ際は、米由来など、株の種類にも注目してみましょう。