乳酸菌の美容と健康LABO

「便秘は働き方病」専門家が語る腸内環境を悪化させるNG習慣

女性は男性に比べて便秘になりやすいと言われています。特に、仕事や家事で忙しく、生活リズムや食生活が乱れやすい働く女性の中には、慢性的な便秘に悩まされている方も多いのではないでしょうか。

便秘は、単に排便がないという不快感にとどまらず、むくみや肌荒れ、さらには作業効率の低下など、全身の不調につながる深刻な問題です。健康で充実した毎日を送るためには、腸内環境を良い状態に保つことが不可欠です。

本記事では、消化管運動の専門家である医師の知見や研究データに基づき、働く女性が陥りやすい腸内環境を悪化させるNG習慣を深掘りします。そして、最新の医学的視点から、便秘の悪循環を断ち切り、体調を根本から整えるための「内側」からのケアの重要性について解説します。

便秘はなぜ全身の不調につながるのか?腸内環境との深い関係

悪玉菌優位な環境が引き起こす「腐敗」と有害物質

便秘の状態が続くと、腸内でどのような悪循環が起きるのでしょうか。

便が腸内に長く滞留すると、腐敗が進み、悪玉菌(ウェルシュ菌など)が優位になります。悪玉菌はタンパク質や脂肪をエサに増殖し、その際にアンモニア、インドール、硫化水素などの腐敗物質(有害物質)を大量に作り出します。

これらの有害物質は腸から吸収され、全身を巡ります。その結果、肌荒れ、体臭や口臭の悪化、倦怠感といった全身の不調を引き起こす可能性があります。さらに、長期的に見ると、これらが生活習慣病の原因になることも指摘されています。

専門家からの視点(消化器専門医の知見)
「便秘症は、日本の人口の10%程度にみられる一般的な疾患であり、高齢化に伴い患者数はさらに増加していくことが予想されています。便秘は、腸管の伝搬性収縮(ぜん動運動)が起こりにくくなることや、直腸内に便が侵入した際に排出することが困難になる機能性便排出障害など、さまざまな病態によって引き起こされます。また、腸内細菌叢にメタン産生菌が多いと、産生されたメタンが大腸の伝搬性収縮を抑制する可能性も指摘されており、腸内環境が便秘の病態に深く関わっていることがわかります。」[1]

1-2. 見落とされがちな便秘が招く「生産性の低下」

最近の研究では、慢性的な便秘が体の不調にとどまらず、脳の働きにも影響を及ぼすことがわかってきています。便秘によって体内に溜まった有害物質が自律神経や脳に影響を及ぼすことで、作業効率や集中力、生産性の低下につながる可能性があります。

「頑張って働いているのに、なぜか集中力が続かない…」と感じる場合、便秘がその隠れた原因となっているかもしれません。

2. 働く女性が陥りやすい!便秘を招くNG習慣5選

便秘を引き起こす腸管の機能的異常の要因には、「不規則な食事・生活」「食物繊維・水分・脂質などの摂取不足」「精神的要因」「便意を抑制する習慣」など、多様な要因があります。[2]

特に、働く女性のライフスタイルに潜む、腸内環境を悪化させる具体的なNG習慣を見ていきましょう。

NG習慣 腸内環境への悪影響
偏った食生活 高脂肪・低食物繊維の食事が続くと、腸内細菌の多様性が低下し、善玉菌と悪玉菌のバランス(腸内細菌叢)が乱れる。
座りっぱなし・運動不足 デスクワークで座りっぱなしの状態が多いと、骨盤の歪みなどで腸の位置がずれたり下垂したりし、腸の機能が低下する可能性がある。運動不足も悪玉菌を増やすことにつながる。
睡眠不足や夜更かし 不規則な生活リズムは体内時計を乱し、腸内環境の悪化につながる。睡眠不足は、腸内環境の悪化を通じた代謝異常の可能性も示唆されている。
過度なストレス 脳と腸は密接な関係(脳腸相関)にあり、ストレスで交感神経が優位になると消化機能が低下し、腸内環境が乱れて悪玉菌が優勢になりやすい。
便意の抑制 忙しさなどから便意を我慢する習慣は、直腸の排便反射を鈍らせ、便を直腸内に長時間貯留させ、機能性便排出障害型の便秘につながる。

2-1. 女性の身体的特徴が便秘リスクを高める理由

女性は、男性に比べて筋力が弱いため、便を押し出す腹筋の力が不足しがちです。また、生理前に増える黄体ホルモンには蠕動運動を抑える働きがあるため、生理前には便秘になりやすくなるという、ホルモンバランスの影響も受けています。

3. 便秘解消の第一歩:便の状態から自分の腸内環境をチェック

自分の腸内環境の状態は、便の「硬さ」「ニオイ」「排便の頻度」から確認することができます。

3-1. 便の「硬さ」:大腸の通過時間と水分のバランス

理想的な便の状態は、表面がなめらかなバナナ状の便です。便の硬さは、大腸を通過する時間と大きく関係しています。

  • コロコロした硬い便: 大腸の通過時間が長すぎる(水分が吸収されすぎている)状態です。
  • 水っぽい便: 大腸の通過時間が短すぎる(水分が十分に吸収されていない)状態です。

腸の蠕動運動(ぜん動運動)は、食事やストレス、加齢などさまざまなものから影響を受け、便の硬さを左右する要因の一つです。

3-2. 便の「ニオイ」:悪玉菌の活動レベルを示すサイン

腸内環境が良い状態であれば、便のニオイはそれほど強くありません。ニオイの原因は、悪玉菌が作り出すアンモニアや硫化水素などの腐敗物質です。肉中心の食生活でタンパク質や脂質の摂取が多いと、悪玉菌が活発になり、便やガスのニオイが強くなります。

4. 便秘の悪循環を断つ!「内側からのケア」としての乳酸菌の可能性

便秘の悩みを根本的に解消するためには、生活習慣の見直しに加え、腸内環境を善玉菌優位な状態に保つことが非常に大切です。

4-1. 善玉菌の力:蠕動運動の活性化と免疫調整

腸内の善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)が優勢な状態であれば、乳酸菌によって乳酸が生産されます。この乳酸が腸を刺激し、蠕動運動を活発にすることで排便が促されます。便がスムーズに排泄されることで、有害物質の吸収が抑えられ、腸内環境がさらに改善するという好循環が生まれます。

また、乳酸菌は単なる整腸作用だけでなく、アレルギー体質に傾いた免疫バランスを正常に近づける免疫調整機能が示唆されるものも近年注目を集めています。

4-2. 研究が示す「米由来乳酸菌(LK-117)」の有用性

乳酸菌には多様な種類がありますが、特定の株の研究が進んでいます。

例えば、神戸大学・兵庫県工業技術センターとの共同研究で発見された米由来の乳酸菌株「LK-117」に関する研究では、一般的な整腸作用に加え、アトピーや花粉症といったアレルギー症状への有用性が示唆されています。[3]

日々の食生活で、研究で有用性が示唆される特定の乳酸菌を継続的に摂ることは、便秘やアレルギーといった日常の悩みを解決し、体質そのものを改善するための手軽で有効な手段の一つとして期待されています。

4-3. 便秘解消に向けた生活習慣と食生活のチェックリスト

便秘の解消には、薬物療法だけでなく、生活習慣・食習慣の改善指導が最も基本となります。[1]

  • 水分と食物繊維をしっかり摂る: 不溶性食物繊維(穀類、豆類など)と水溶性食物繊維(海藻類、こんにゃくなど)をバランスよく摂取する。
  • 規則正しい排便習慣: 朝食を摂ることで大腸の「大蠕動」が起こりやすくなるため、朝食後に排便をする習慣をつける。
  • 良質な睡眠と休養: ストレスや疲労は腸内環境を乱します。十分な睡眠と適度な休養を確保する。
  • 特定の乳酸菌を継続摂取: 米由来の乳酸菌など、研究で有用性が示唆される乳酸菌を毎日手軽に摂取し、腸内環境を整える。

5. まとめ:体調の鍵を握る腸内環境を整え、質の高い毎日を

便秘は、腸内の悪玉菌を優位にし、全身の不調や生産性の低下を招く悪循環の始まりです。働く女性が健康的な毎日を送るためには、この悪循環を断ち切ることが重要です。

腸内環境を良い状態に保つには、食生活や睡眠などの生活習慣の見直しと、善玉菌の力を借りて腸内をサポートする「乳酸菌」の継続摂取が鍵となります。特に、米由来の乳酸菌のように、研究で有用性が示唆されている特定の乳酸菌を選ぶことが、体質改善の近道となるかもしれません。

【参考文献】本記事は参考情報であり、医師の診断・治療を代替するものではありません。症状の改善には、必ず専門の医療機関にご相談ください。
  1. 木下 芳一. 慢性便秘の診断と治療の最近の動向. 日本内科学会雑誌. 2020;109(9):1945-1950.
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット:便秘と食習慣
  3. 神戸大学・兵庫県工業技術センター 共同研究発表資料 他

よくある質問

Q1: なぜ女性は男性より便秘になりやすいのですか?

A. 理由としては、女性は男性に比べて腹筋などの筋力が弱く便を押し出す力が不足しがちなこと、また、生理前に分泌が増える黄体ホルモンが腸の蠕動運動を抑える働きを持つことなどが挙げられます。

Q2: 腸内環境が悪いと便秘以外にどのような不調が出ますか?

A. 腸内で発生した有害物質が全身に吸収されることで、肌荒れや吹き出物、むくみ、倦怠感、集中力や生産性の低下など、多岐にわたる不調につながる可能性があります。

Q3: 乳酸菌はいつ摂るのが効果的ですか?

A. 乳酸菌は薬ではないため厳密な決まりはありませんが、毎日継続して摂ることが最も重要です。食後に摂ることで、胃酸の影響を受けにくくなるとも言われています。特定の研究で免疫調整機能が示唆されている米由来などの株を選ぶこともおすすめです。

Q4: 便秘薬(下剤)を常用しても大丈夫ですか?

A. 刺激性下剤(センナなど)は、長期連用によって効果が減弱しやすく、投薬量が増加しやすいと考えられています。専門医からは、刺激性下剤の連用は避け、頓用投薬とすることが推奨されています。まずは食事・生活習慣の改善と、浸透圧性下剤や上皮機能変容薬などの専門医の指導に基づく適切な治療法を選択することが重要です。

便秘と腸内環境・年齢別対策まとめ|子ども・女性・高齢者
便秘の基本と腸内環境との関係