毎年冬が近づくと、インフルエンザをはじめとする感染症の流行が心配になります。特に免疫系がまだ発達途上にある子どもは、大人よりも感染しやすく、重症化のリスクも高いため、親御さんにとっては気がかりなことでしょう。感染予防の基本はもちろん、手洗いうがいやワクチンの接種ですが、さらに重要なのが、子どもが本来持つ「免疫力」という内なる防御システムを最大限に高めておくことです。
本記事では、最新の免疫学の知見に基づき、子どもの免疫システムの構造と、その司令塔ともいえる「腸内環境」の深い関係を専門的に解説します。そして、単なる整腸作用を超えて、免疫機能に直接働きかける可能性が示唆されている米由来の乳酸菌の役割に焦点を当て、冬を健やかに乗り切るための具体的なインナーケアのヒントをご紹介します。
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子どもの免疫システムを理解する:未熟な防衛ラインの特徴
子どもの免疫力は、成長段階によって大きく変化します。大人の免疫系とは異なる、子どもの免疫システムの特徴を理解することが、適切なケアに繋がります。
免疫の「学習期間」:なぜ子どもは感染症にかかりやすいのか
免疫系は、異物(ウイルスや細菌)と出会うことで学習し、発達していきます。幼児期は、母親から受け継いだ免疫(移行抗体)が徐々に減少し、自分自身で新たな免疫を獲得していく最も重要な時期です。この「学習期間」にあるため、様々なウイルスに遭遇するたびに発熱や風邪といった症状が出やすくなります。
インフルエンザウイルスは変異が早く、子どもは新しい型に対する免疫が未熟なため、感染しやすく重症化リスクが高いと言われています[1]。このリスクを軽減するためには、ワクチン接種はもちろん、免疫の土台となる全身の抵抗力を高めることが必須です。
免疫の司令塔:体内の防御細胞「マクロファージ」の重要性
マクロファージは、体内に侵入したウイルスや細菌を文字通り「食べて排除」する、免疫の初期防衛を担う細胞です。さらに、他の免疫細胞(T細胞など)に異物(抗原)の情報を伝え、免疫反応全体のスイッチを入れる「司令塔」の役割も果たします。このマクロファージが活発に働くことが、感染症への迅速な初期対応に繋がります。

免疫細胞の7割が集中!「腸内環境」と感染症防御の深い関係
子どもの体質改善や感染症予防を考える上で、無視できないのが腸内細菌叢(腸内フローラ)の存在です。全身の免疫細胞の約7割は腸に集中しており、腸内環境こそが免疫機能の最前線と言えます[2]。
腸管免疫:外敵侵入を防ぐ「バリア機能」
腸の粘膜は、体内に異物が侵入するのを防ぐ強固なバリアを形成しています。腸内細菌叢が良好な状態にあると、このバリア機能が強化され、ウイルスや有害物質の侵入を防ぎやすくなります。逆に、腸内環境が乱れるとバリアが弱まり、感染リスクが高まるだけでなく、アレルギーや炎症を引き起こす可能性が高まります。
【深掘り解説】アレルギーも感染症も支配する「Th1/Th2バランス」
免疫系には、主にTh1細胞とTh2細胞という二つのヘルパーT細胞があり、そのバランスが健康の鍵を握ります。
- Th1細胞: ウイルス感染などの際に活性化し、体内の異物を攻撃・排除する「防御・対ウイルス免疫」を担います。
- Th2細胞: アレルギー反応を引き起こす抗体(IgE)の産生を促すなど、「アレルギー・対寄生虫免疫」を担います。
このバランスがTh2優位に傾きすぎるとアレルギーが出やすくなり、Th1が十分に働かないとウイルスなどに対する抵抗力が弱くなる傾向があります。腸内環境を整えることは、このバランスを安定させ、アレルギーと感染症の両方に対応できる体質づくりに繋がると示唆されています。
免疫の土台を固める「発酵菌」:米由来乳酸菌の独自性
腸内環境を整えるための代表的な食品として乳酸菌がありますが、インフルエンザやアレルギー対策という観点から、菌を選ぶ際には「機能性」に注目することが重要です。
「生菌」神話の次の常識:「死菌」の免疫活性化作用
かつては「生きた乳酸菌でないと意味がない」と言われていましたが、最新の研究では、胃酸などで死滅した「死菌」やその菌体成分(細胞壁など)が、腸管免疫に存在するマクロファージなどの細胞に直接働きかけ、免疫活性を高める「バイオジェニックス」としての価値が注目されています。
専門知見:マクロファージ活性化と死菌の優位性
特定の乳酸菌は、熱処理された死菌の状態でも、免疫の司令塔であるマクロファージを強く活性化することが研究で示されています。これは、生きた菌よりも死菌の方が、成分が安定して腸管免疫に到達しやすく、効率的に免疫細胞へ情報を伝えられるためと考えられます[3]。
日本人の体質に馴染む「米由来の乳酸菌」
ヨーグルトなどに含まれる動物性乳酸菌に対し、味噌や漬物、そして日本酒の醸造過程から生まれた米由来の乳酸菌は、長年お米を主食としてきた日本人の腸内環境に馴染みやすいという特性があります。
菊正宗が、江戸時代から続く伝統的な「生酛(きもと)造り」という厳しい環境の中で発見し、共同研究を進めている特定の米由来乳酸菌(LK-117)は、その強い生命力と特有の菌体成分から、特に注目されています。
神戸大学・兵庫県工業技術センターとの共同研究において、この米由来の乳酸菌の菌体成分が、上記のマクロファージの活性化や免疫バランス(Th1/Th2)の調整に有用である可能性が示唆されており、子どもの感染症・アレルギー体質の両面をサポートする食品として期待されています。
Q&A:子どもの免疫と乳酸菌に関する疑問を解決
子どもがインフルエンザにかかりやすいのは、親の腸内環境が原因ですか?
A. 子どもの腸内環境は、出生時やその後の母乳、食事などによって形成され、親の腸内細菌の影響も受けることが示唆されています。しかし、子どもの感染リスクは、免疫の未熟さ、集団生活、予防接種の有無など多くの要因が絡み合っています。親の腸内環境だけが原因とは言えませんが、親が自身の腸内環境を整え、子どもに健康的な食生活を提供することは、子どもの免疫をサポートする上で非常に重要です。
乳酸菌を摂れば、インフルエンザの予防接種は不要になりますか?
A. 乳酸菌はあくまで体質をサポートする食品であり、医薬品ではありません。「予防接種を代替する」といった断定的な効果は謳えません。インフルエンザワクチンは重症化を防ぐための最も重要な手段の一つです。乳酸菌の摂取は、ワクチンの効果を妨げるものではなく、免疫の土台を固めるための補完的な対策として行うことを推奨します。
子どもに乳酸菌を摂取させる際の注意点はありますか?
A. 乳製品アレルギーがある場合は、ヨーグルトなどの動物性乳酸菌ではなく、米や植物由来の乳酸菌を選ぶことが推奨されます。また、乳酸菌は効果を実感するまでに時間がかかる(最低1〜2ヶ月)ため、無理なく少量でも毎日継続できる形態(サプリメントなど)を選ぶことが大切です。摂取量や体調の変化について不安があれば、かかりつけの医師や小児科医に相談しましょう。
米由来の乳酸菌は、アレルギー体質の子にも良いのでしょうか?
A. 一般的に、米由来の乳酸菌は乳成分を含まず、日本人の体質に馴染みやすいという特徴があります。特に特定の米由来乳酸菌(例:LK-117)については、免疫バランス(Th1/Th2)を整える働きが研究で示唆されているため、アレルギー体質をサポートする目的で検討する価値があると言えるでしょう。
まとめ:家族の健康は「腸」から始まる
冬のインフルエンザ対策、そして日頃のアレルギー対策の鍵は、免疫細胞の土台である「腸」の環境を整えることです。子どもの免疫司令塔であるマクロファージを活性化し、免疫バランスを安定させるためには、特定の機能性を持つ乳酸菌の継続的な摂取が、食事や生活習慣の改善とともに有効な手段の一つとなります。
特に、日本の伝統的な発酵文化から生まれた米由来の乳酸菌は、私たちの体に深く馴染む安心感と、共同研究によって示唆される特有の免疫調節作用から、これからの子どもの健康を支える有力な選択肢となるでしょう。
※本記事は、一般的な健康・美容情報を提供するものであり、特定の成分や商品の効能・効果を謳うものではありません。また、医師の診断・治療を代替するものではありません。 健康上の問題やアレルギー症状がある場合は、必ず専門医にご相談ください。
参考文献
- [1] 谷口清州. インフルエンザ. Jpn Open J Respir Med 2018 Vol. 2 No. 5.
- [2] 厚生労働省. e-ヘルスネット | 腸内細菌と健康.
- [3] マクロファージ様細胞株を用いた免疫調節作用の高い生もと乳酸菌の選抜(特定の研究資料より).
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