高齢者になると、便秘に悩まされる方が増えます。単なる不快な症状ではなく、さまざまな健康リスクを招く可能性があるため、放置は禁物です。この記事では、高齢者の便秘について、原因、症状、予防法、治療法に加え、近年注目されている乳酸菌の可能性について分かりやすく解説します。
高齢者の便秘:なぜ起こりやすいのか?
高齢者が便秘になりやすい理由は、加齢による体の変化と生活習慣の変化が複合的に影響するためです。では、その原因を詳しく見ていきましょう。
加齢による体の変化
加齢に伴い、腸の蠕動運動が低下し便を十分に押し出す力が弱くなります。また、腹筋や骨盤底筋群などの筋力低下により、排便時に必要な腹圧をかけにくくなります。さらに、高齢者は喉の渇きを感じにくくなり、無意識のうちに水分補給不足に陥りがちです。加えて、高血圧症や不整脈などに処方される多くの薬剤に便秘の副作用があることも影響します。
- 腸の機能低下: 年齢とともに腸の蠕動運動が低下し、便を押し出す力が弱くなります。
- 筋力低下: 腹筋や背筋などの筋力が低下すると、排便時に必要な力が弱くなります。
- 水分不足: 高齢者は喉の渇きを感じにくく、水分補給が不足しがちです。
- 薬の副作用: 多くの薬の副作用として便秘が挙げられます。
生活習慣
運動不足により腸の運動性が低下し、筋力低下も加わって便秘を招きます。繊維質の少ない食生活が続くと便の量が減少し、便秘になりやすくなります。認知症が進行すれば、排便の気づきが鈍くなったり、トイレの場所が分からなくなる可能性もあります。また、入院や施設入所で環境が変わると、生活リズムの乱れから食事と運動不足が重なり、更に便秘を引き起こしかねません。
- 運動不足: 運動不足は腸の蠕動運動を低下させ、便秘を悪化させます。
- 不規則な生活: 睡眠不足や不規則な食事は、腸内環境を乱し、便秘を招きます。
- 偏った食生活: 食物繊維や水分が不足した食生活は、便秘の原因となります。
高齢者の便秘:症状とサイン
高齢者の便秘は、以下のような症状やサインで現れます。
- 排便回数が少ない: 週に3回未満
- 便が硬い: 排便時に力む必要がある
- 排便に時間がかかる: 30分以上
- 残便感がある: 排便後もすっきりしない
- 腹痛: お腹が張ったり、痛みを感じる
高齢者の便秘には様々な症状があらわれます。排便が3日以上ない状態が続く場合は便秘と判断されますが、他にも便が小さく硬い、排便時の苦しみや痛み、不完全な排便感など、典型的な症状が見られます。また、食欲不振や腹部膨満感、嘔吐などの二次的な症状も起こりえます。高齢者自身が便秘に気付きにくい場合もあるため、周りの介護者はサインに注意を払う必要があります。
高齢者の便秘:放置すると危険
便秘を放置すると、以下のような健康リスクが考えられます。
- 痔核: 肛門周辺の静脈が拡張し、痛みや出血などの症状が現れます。
- 憩室炎: 腸壁の一部が突出し、炎症を起こす病気です。
- 腸閉塞: 腸が完全に詰まってしまい、命に関わることもある重篤な状態です。
- 認知症: 脳血流が悪化し、認知機能が低下する可能性があります。
- 転倒・骨折: 排便時に力むことで転倒し、骨折するリスクが高まります。
高齢者の便秘を放置すると、重大な健康リスクにつながる可能性があります。腸閉塞になれば手術が必要となり、肛門周囲膿瘍や痔核など肛門周辺の病気にもなりかねません。また、長期の便秘は認知症の悪化や尿失禁のリスクを高めます。深刻な合併症を防ぐには、早期からの適切な対処が不可欠です。
高齢者の便秘:予防と対策
高齢者の便秘を予防するには、以下の点に注意しましょう。
- 規則正しい生活: 規則正しい生活習慣は、腸内環境を整え、便秘の予防に効果的です。
- 適度な運動: ウォーキングや軽いジョギングなど、適度な運動は腸の蠕動運動を活発化させます。
- 水分・食物繊維をしっかりと摂取: 水分と食物繊維をしっかりと摂取することで、便を柔らかくし、排便を促します。
- 排便習慣: 毎日決まった時間にトイレに行くように心がけましょう。
- 腹筋運動: 腹筋運動は排便時に必要な筋力を強化します。
- 薬の見直し: 便秘薬の乱用は逆効果になるため、医師に相談しながら服用しましょう。
高齢者の便秘予防には、生活習慣の改善が何より重要です。適度な運動を心がけ、食物繊維を十分にとることで便通を良くすることができます。規則正しい排便習慣をつけ、こまめな水分補給も大切です。一方で治療が必要な場合は、浣腸や便秘薬の使用が一時的な対処法として有効です。さらに近年、乳酸菌の継続的な摂取が便秘改善に役立つ可能性が指摘されています。高齢者一人ひとりに合わせた総合的なアプローチが便秘対策には求められます。
高齢者の便秘:治療法
高齢者の便秘を改善するための治療法には、いくつかの選択肢があります。一時的な対処としては浣腸や便秘薬の使用が一般的です。浣腸は即効性がありますが、頻繁に使うと腸に負担がかかる恐れがあります。一方、便秘薬には様々な種類があり、症状に合わせて適切なものを選ぶ必要があります。しかし薬物療法には副作用の危険もあるため、生活習慣の改善を基本に置くべきでしょう。
生活習慣の改善で便秘が改善しない場合は、医師に相談して適切な治療を受けることが大切です。
- 薬物療法: 便秘薬や下剤などの薬が処方されます。
- 浣腸: 浣腸で直腸に刺激を与え、排便を促します。
- マッサージ: 腹部をマッサージすることで、腸の蠕動運動を活発化させます。
- 手術: 重症の場合は、手術が必要になる場合もあります。
高齢者の便秘と乳酸菌の可能性
近年、高齢者の便秘改善に乳酸菌が効果的である可能性が指摘されています。乳酸菌は腸内環境を整え、良質な便を確保する働きがあるためです。実際に一部の研究では、乳酸菌を継続的に摂取することで便通が改善された例が報告されています。ただし、それだけで十分とは限らず、運動や食事など生活習慣の改善を組み合わせる必要があります。乳酸菌に便秘改善効果があるかについては、さらなる研究が求められています。高齢者一人ひとりに合った総合的なアプローチが不可欠です。
乳酸菌の種類と選び方
乳酸菌には様々な種類があり、それぞれ異なる効果や特徴を持っています。
また、乳酸菌を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
- 種類: 目的や症状に合った種類を選ぶ
- 菌数: 10億個以上含まれているものを選ぶ
- 菌株: 信頼できるメーカーの製品を選ぶ
- 配合成分: 乳酸菌だけでなく、飲みやすいように加糖している場合がありますので成分をしっかり確認しましょう。
乳酸菌摂取の注意点
乳酸菌は、基本的に安全性の高い食品ですが、以下の点に注意が必要です。
- アレルギー: 乳製品アレルギーがある場合は、乳酸菌を含む食品を摂取できない場合があります。
- 薬との相互作用: 一部の薬と相互作用を起こす可能性があります。
- 過剰摂取: 過剰摂取すると、下痢などの症状が現れる場合があります。
乳酸菌摂取のポイント
乳酸菌には、多くの種類があります。
その中で便秘に効果のあるものはこれ!、この菌が良いという判断は非常に難しいです。
その理由は、人の身体の中に住み着いている菌が一人ひとり違うからであり、また生活習慣や身体の大きさ等によって大きく違いがあるからです。
逆に言えば、「試さないとわからない」とも言えます。
多くのサイトでは、「この商品が良い」「これが効果がある」と表記してあるものもあります。
ただそれを鵜呑みにしてしまうと、残念な結果になる場合があることは理解をしていただきたいと思います。
また、乳酸菌の特性上摂取し続けることも重要になります。薬ではないので、即効性はありません。過度な期待ではなく日常に取り入れて欲しいと考えています。
まとめ
高齢者の便秘は、単なる不快感をさらに越えてさまざまな健康リスクを招く深刻な問題です。便秘が長期化すると、腸閉塞で手術が必要になる可能性や、肛門周囲膿瘍、痔核などの肛門周辺の病気にもなりかねません。さらに認知症の悪化や尿失禁のリスクも高まります。このような重大な合併症を防ぐためには、早期からの適切な対処が不可欠なのです。
便秘予防や改善のためには、まず生活習慣の改善が何より重要です。適度な運動を心がけて腸の運動性を高め、食物繊維を意識的に摂取して便の量を確保することが基本となります。規則正しい排便習慣づくりと、こまめな水分補給も欠かせません。一方で対症療法として浣腸や便秘薬の使用も一時的な選択肢ですが、頻繁に使うと副作用のリスクもあります。
そこで近年、高齢者の便秘改善に乳酸菌が効果的である可能性が注目されています。乳酸菌には腸内環境を整え、良質な便を確保する働きがあると考えられているのです。実際に一部の研究では、乳酸菌を継続的に摂取することで便通改善がみられた例が報告されています。ただし、乳酸菌の摂取だけでは十分ではなく、運動や食生活など生活習慣の改善を組み合わせる必要があります。
乳酸菌製品を選ぶ際は、菌の種類や含有菌数、配合成分など、様々な点で商品ごとに違いがあるため注意が必要です。高齢者一人ひとりに合った商品を選び、適切な方法で継続して摂取することが重要になります。乳酸菌の便秘改善効果については、まだ検証が十分でないことから、さらなる研究の蓄積が求められています。しかし、既存の知見を踏まえれば、生活習慣の改善に加えて乳酸菌の摂取を組み合わせることで、高齢者の便秘対策はより効果的になると期待できるでしょう。