水野雅史(元神戸大学 大学院農学研究科 教授)
日本農芸化学会 関西支部評議委員
日本癌学会 / 日本食品科学工学会 / 日本フードファクター学会 / 日本きのこ学会 / American Chemical Sciety
神戸大学大学院自然科学研究科助教授、同大学農学部教授などを経て食品機能性研究者として、数多くの業績を残す。
平成13年、日本食品科学工学会奨励賞受賞。
平成21年には、第31回森喜作賞を受賞。
今年もあの毎日が辛い花粉の時期がやって来ました。インフルエンザに引き続き、この花粉症についても今年はものすごい量の花粉が散布するという予報が発表されました。※
クシャミ、鼻水そして目の痒みなどで、毎日のマスクが必須アイテムになりそうです。
そんな中で、マスク以外の花粉症の対策として今注目されているのが、免疫力を高める働きのある乳酸菌です。
この花粉の時期までに、身体の免疫力を高める方法や乳酸菌の働きを、食品機能性研究者として数々の業績を持ち、LK-117乳酸菌の共同開発研究に携わって頂いた、元神戸大学大学院農学研究科・水野雅史教授とともに今年の花粉症対策をわかりやすく解説していきます。
日本人で花粉症に悩んでいる方は3人に1人とも言われ、その数は年々増え続けています。
1998年と2018年の有病率の統計データによると、花粉症全体とスギ花粉症のどちらも10年間でおよそ10%も増加していました。また、花粉症というと、以前は大人に発症するものと考えられていましたが、最近では乳幼児期に発症するケースも増えてきています。
花粉症は、花粉を抗原とする鼻粘膜と結膜のアレルギー性の病気ですが、体内に花粉が侵入してすぐに発症する病気ではありません。また、アレルギーの素因を持たない人は花粉症を発症することはありません。
アレルギーとは、体外から体内に侵入する細菌やウイルスなどを無害化する免疫反応が過剰に反応してしまうことです。体内に花粉が侵入すると、アレルギー素因を持った人はその花粉(抗原)に対応する抗体をつくります。この抗体はIgE抗体と呼ばれ、花粉の種類によって異なった抗体がつくられます。そして、数年から数十年花粉を浴びるとやがて抗体が十分な量になり、再び花粉が体内に侵入すると、花粉に対して抗体が反応することで、くしゃみや鼻水、涙などの花粉症の症状が現れます。
十分な抗体が作られるまでの期間は人によって違いますが、近年は飛散する花粉量が増加しているために、期間が短くなり小さな子供でも花粉症を発症するケースが増えています。
花粉症の症状の重症度は、鼻や目の粘膜に付着する花粉量や、体内にできている抗体の量によって左右されます。
しかし、最近では、花粉症患者の増加や症状の悪化の原因として、飛散する花粉量の増加だけでなく、食生活の変化、感染症の減少(衛生仮説)、大気汚染、喫煙、ストレスなどが影響しているとされています。
私たちの体を守る免疫システムは、様々な免疫細胞が互いにバランスをとりながらコントールしています。しかし、環境汚染やストレス、不規則な生活習慣などの影響で免疫バランスが乱れてしまうと、免疫システムに異常が起こります。
人の免疫システムには、免疫の司令塔の役割をするT細胞があります。T細胞には、主にウイルスなどの感染に働く「Th1細胞」と、主に抗原(アレルゲン)に働く「Th2細胞」があり、互いにシーソーのようにバランスをとりあっています。しかし、このバランスが乱れTh2細胞が過剰になるとIgE抗体をが過剰に作られ、様々なアレルギー症状が引き起こされやすくなります。つまり、この免疫バランスがアレルギー対策のポイントともいえます。
アレルギー素因を持った人の血液中のIgE値は高い傾向にあります。そして、このIgE抗体の産生を抑制するには、Th1細胞の増加を促進し乱れた免疫バランスを整えるとが必要となります。
LK-117乳酸菌を摂取すると、免疫担当細胞であるマクロファージが認識し、Th1細胞を増加の方向に導いて免疫バランスを整えることが研究で明らかになっています。
免疫担当細胞であるマクロファージが、LK-117乳酸菌を認識するとTh1やTh2細胞になる前の親細胞に、「Th1を増やせ!」という指示をする免疫調整物質(IL-12)を産生することで、免疫バランスを整えます。
マウスに由来するマクロファージ様細胞にLK-117を含む複数の生酛由来の乳酸菌を添加し、それぞれのIL-12の量を測定したところ、乳酸菌を添加していないときに比べIL-12産生能が増加しました。
その結果から、特にIL-12産生能増加の数値が高い乳酸菌を選抜し、それぞれ4日間マウスに投与し、その後、マウスにIgE抗体を注射しアレルギーを反応を起こせ、耳の腫れ(アレルギー反応)を計測したところ、最も強い抑制作用が認められたのがLK-117です。
これにより、LK-117乳酸菌には、マクロファージに作用してIL-12の生産を促進することにより免疫バランスを整える働きがあることが考えられます。また、LK-117乳酸菌を投与することでアレルギー症状が緩和されていることもわかります。
LK-117乳酸菌は、江戸時代から続く伝統的な酒造りの製法である「生酛造り」から生まれた天然の乳酸菌です。酒蔵に棲む天然の乳酸菌は、何度も樽の中で闘いを繰り返し生命力の強い種類だけが生き残っていきます。そんな厳しい環境の中で勝ち抜いた20種類以上の乳酸菌株の性質を比較研究し、その中から特に優れた免疫調整機能を持つ乳酸菌が「LK-117」です。
乳酸菌は様々な発酵食品に含まれていますが、昔から日本人が慣れ親しんできた醤油、漬け物、日本酒などに棲息する乳酸菌の方が適しているとされています。
花粉症の方から、乳酸菌ならなんでもいいの?!とご質問を頂くことがあります。
この答え自体は「YES」です。
ただ、乳酸菌と言っても実は様々な働きをするものがあり、種類も豊富です。乳酸菌を摂取する事で、腸内環境が改善し、ヒトの健康的な毎日を支えてくれることは事実ですが、花粉症の方は今すぐにでも「とにかくどうにかしたい!」という想いで、日々の辛いを感じているかと思います。
だからこそ、私がオススメしているのが花粉症などのアレルギーに働きかける乳酸菌です。実際に今では多くの乳酸菌やそれに付随した商品がありますが、腸内環境だけではなくアレルギーに働きかける乳酸菌という「特別な乳酸菌」は数少ないです。
特にこのLK-117は、アレルギー症状の改善が期待できる乳酸菌で、日本人にとって非常に馴染みのある「米」を原料とし、昔ながらの製法である日本酒造りから生まれた乳酸菌です。日本酒は昔から百薬の長とも言われ、日本人に親しまれてきました。また、最近では酒粕や甘酒には様々な栄養が豊富にあることが、メディアや雑誌などで再注目され話題となっています。
※ LK-117は日本酒造りの工程から生まれた乳酸菌ですが、アルコールなどは一切含まれていません。もちろん子供にも摂取いただけます。
花粉症は事前の対策がとても重要です。
花粉症の根本的な治療法は、現在のところ確実なものはありませんが、生活習慣を見直し免疫バランスを整えておくことで症状を緩和することができます。具体的には、以下のようなものがあります。
自律神経と免疫には深い関係があります。自律神経には、活動時に働く交感神経と睡眠時やリラックス時に働く副交感神経があり、この2つが交互にバランス良く働くことで体の調子や免疫機能を整えています。この自律神経の働きには、規則正しい生活、ストレスを溜めない、朝食を摂る、適度な運動をするなどが有効です。
アレルギーは、食生活の欧米化(高脂質・高たんぱく食)の影響で腸内環境が変化したことが影響しているとも言われています。ファーストフードやインスタント食品などの加工品や、脂肪の多いお肉、お菓子、ジュースなどは、免疫力の低下にもつながるので、なるべく避けましょう。日本食を中心としたバランスの良い食生活を心がけるが大切です。
花粉症対策として、腸内環境を整えるもの、抗酸化作用のあるもの、粘膜の保護に働くもの、体温を上げるものを意識して食べることが大切です。
乳酸菌による花粉症への効果が注目されていますが、乳酸菌であればどれでもいいというわけではありません。むしろ、花粉症の症状緩和が期待される免疫調整機能を持つことが証明されている乳酸菌は、現在のところ数種類です。つまり、花粉症対策には、LK-117乳酸菌のように実験結果がきちんと確認されている乳酸菌を摂取する必要があります。
花粉症シーズン中の症状を緩和するためには、花粉が飛散する前に免疫バランスを整えておく必要があります。免疫バランスというのは1日や2日生活習慣を見直しただけで変わるものではなく、さらに、良い状態を保つためには続けなければ意味がありません。だからこそ、早めに始めること、そして習慣化することが重要です。