【結論】アレルギーは「免疫力が弱い」から起こるのではなく、免疫のバランスの乱れによって起こります。鍵を握るのは、獲得免疫のヘルパーT細胞(Th1/Th2)のバランスと、IgE抗体です。そして免疫細胞の約6〜7割は腸に集中しているため、腸内環境を整えることが免疫バランスを支える土台になると考えられています。本記事では、免疫の基礎からアレルギー発症の仕組み、体の内側からのアプローチまでを専門家監修のもと整理します。
検証:菊正宗酒造 乳酸菌研究開発チーム
研究成果一覧(LK‑117等)
菊正宗酒造総合研究所
花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー——これらはいずれも、本来は無害なはずの物質に免疫が過剰に反応することで起こります。なぜ免疫が「間違えて」しまうのか。その仕組みを、免疫の基本から順にたどっていきます。
免疫の基礎:自然免疫と獲得免疫
免疫は、ウイルス・細菌・花粉などの異物(非自己)から体を守る防御システムです。大きく「自然免疫」と「獲得免疫」の2つに分けられ、両者が連携して働きます。
自然免疫(生まれつき備わる第一線)
異物の種類を問わず、侵入から数分〜数時間で素早く対応する仕組みです。主役はマクロファージ・好中球・樹状細胞などの「食細胞」で、異物を取り込んで排除する貪食作用や炎症反応で攻撃します。樹状細胞は異物の情報を獲得免疫へ伝える橋渡し役も担います。
獲得免疫(経験で強くなる仕組み)
一度侵入した異物を特異的に記憶し、二度目はより速く効率的に排除します。「適応免疫」とも呼ばれます。主役はT細胞・B細胞などのリンパ球で、働きは次の2つに分かれます。
- 細胞性免疫:感染した細胞やがん細胞を直接攻撃して排除する。キラーT細胞が中心。
- 液性免疫(体液性免疫):血液・体液中の異物を排除する。B細胞が「抗体」をつくり、抗体が異物を標的にする。

アレルギーが起こる仕組み:IgE抗体とTh1/Th2バランス
アレルギーは、免疫システムが本来無害な花粉・食物などの物質(アレルゲン)に過剰反応することで起こります。中心にあるのが、液性免疫でつくられるIgE抗体です。
IgE抗体と発症のプロセス
アレルギー体質の人は、アレルゲンが侵入するとIgE抗体を過剰につくり、これが全身の肥満細胞(マスト細胞)に結合します。再びアレルゲンが侵入してIgE抗体と結合すると、肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が大量に放出され、くしゃみ・鼻水・かゆみなどの症状が引き起こされます。
Th1細胞とTh2細胞のバランス
獲得免疫の司令塔であるヘルパーT細胞には、主に「Th1細胞」と「Th2細胞」があります。
- Th1細胞:細菌・ウイルスなど細胞内の病原体を排除。細胞性免疫を活性化。
- Th2細胞:寄生虫などの排除を担い、抗体産生を促進。液性免疫を活性化。
この2つは通常バランスを取り合っていますが、崩れてTh2優位に傾くとIgE抗体が過剰につくられ、アレルギー反応が起こりやすくなると考えられています。近年のアレルギー疾患の増加には、このバランスの乱れが一因ではないかと研究が進められています。

アレルギー反応の4つの型(I〜IV型)
アレルギー反応は、関わる抗体や細胞の違いによってI〜IV型に分類されます(クームスとゲルの分類)。一般に「アレルギー疾患」と呼ばれるものの多くはI型です。
| 型 | 別名・反応の速さ | 主に関わるもの | 代表的な疾患 |
|---|---|---|---|
| I型 | 即時型(15分〜2時間) | IgE抗体・肥満細胞・ヒスタミン | 花粉症、気管支喘息、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、じんましん、アナフィラキシー |
| II型 | 細胞障害型 | IgG・IgM抗体が自己の細胞を標的化 | 自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病 |
| III型 | 免疫複合型 | 抗原+IgG抗体の複合体が組織に沈着 | 関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎 |
| IV型 | 遅延型(半日〜数日) | 抗体は関与せず、Tリンパ球が主役 | 接触性皮膚炎、ツベルクリン反応、金属アレルギー |
アトピー性皮膚炎は、IgEが関わるI型と、Tリンパ球が関わるIV型の混合型と考えられています。
代表的なアレルギー疾患のメカニズム
花粉症(アレルギー性鼻炎)
花粉が鼻粘膜から侵入するとIgE抗体がつくられ、鼻や目の粘膜の肥満細胞に付着します。再び花粉が侵入するとIgE抗体と結合し、肥満細胞からヒスタミンなどが放出され、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみが起こります。花粉が飛散する時期だけ症状が出るのが特徴です。
アトピー性皮膚炎
かゆみを伴う湿疹が繰り返し起こる病気で、目・耳のまわり、首、肘や膝のくぼみなどに出やすいのが特徴です。アレルギー体質や肌のバリア機能の低下といった内的要因と、アレルゲン・生活環境・ストレスなどの外的要因が重なって発症すると考えられています。幼小児に多く、多くは成長とともに軽快しますが、思春期・成人期に再発・重症化することもあります。
食物アレルギー
通常、食べ物は異物と認識されず栄養として吸収されます。しかし免疫の問題や消化吸収機能の未熟さから、食物中のたんぱく質を異物と認識してしまうと、それを排除するためにアレルギー反応が起こります。重い場合は血圧低下や意識障害を伴うアナフィラキシーに至ることもあります。
気管支喘息
気道に慢性の炎症が起き、気道が狭くなって咳・喘鳴・呼吸困難を繰り返す病気です。ダニ・ハウスダスト・ペットのフケなどがアレルゲンになります。治療せず放置すると気道の構造が変化し、元に戻りにくくなると言われています。
発症の二大要因は「遺伝」と「環境」
アレルギーの発症・悪化には、遺伝的因子と環境的因子の両方が関わります。遺伝的因子が急に変化することは考えにくいため、ここ数十年のアレルギー急増の背景には、住環境・食環境・衛生環境の急速な変化の影響が大きいと考えられています。開発途上国より先進国、農村部より都市部で罹患率が高いことも報告されています。
「衛生仮説」——きれいすぎる環境とアレルギー
乳幼児期に細菌やウイルスなどの微生物にふれる機会が減ると、免疫の訓練が不足してTh2優位に傾きやすくなる、という考え方が「衛生仮説」です。近年はこれが発展し、腸内細菌をはじめとする常在菌の多様性の低下が免疫の調整不全に関わるとする「オールドフレンド仮説」も提唱されています。抗菌・除菌の行きすぎや食生活の変化が、常在菌の多様性を通じてアレルギー体質に影響している可能性が指摘されています。
免疫バランスを整える鍵は「腸内環境」
アレルギー対策では、免疫力を単に「高める」のではなく、乱れたバランスを正常に近づけることが重要です。そのために欠かせないのが腸内環境です。
免疫細胞の約6〜7割は腸に存在するとされ、腸内環境は全身の免疫システムに大きく影響します。腸内細菌は免疫細胞を「教育」し、過剰な反応を抑える制御性T細胞(Treg)の働きを支えることが研究で示されています。腸のどの仕組みが免疫に関わるのかは、以下で詳しく解説しています。
免疫バランスを整える生活習慣
特別なことより、免疫の土台を崩さない生活の積み重ねが基本です。
- 発酵食品+食物繊維をそろえる:味噌・納豆・漬物・ヨーグルトなどの善玉菌と、野菜・海藻・豆類・雑穀の食物繊維(善玉菌のエサ)を組み合わせる(シンバイオティクス)。
- 高脂肪・低食物繊維に偏らない:食生活の欧米化は腸内細菌の多様性を下げる方向に働きます。
- 睡眠を確保する:睡眠不足は免疫の調整機能を乱します。
- 適度な運動とストレスケア:慢性的なストレスは自律神経を介して免疫バランスに影響します。
- アレルゲン対策と両輪で:マスク・こまめな掃除・帰宅時の花粉除去など、アレルゲンを避ける対策と並行して行います。
乳酸菌「LK-117」と免疫バランスの研究
菊正宗と神戸大学の共同研究では、米由来乳酸菌「LK-117」がマクロファージに作用し、Th1細胞を増やすIL-12の産生を促すことが示唆されています。マウス試験ではアレルギー反応による耳の腫れが軽減されており、免疫バランスを整えることを通じてアレルギー症状を緩和する可能性が期待されています。乳酸菌とビフィズス菌の違いや菌活の基本は、以下も参考になります。
FAQ:よくある質問
- アレルギーは免疫力が弱いから起こるのですか?
- いいえ。アレルギーは免疫が過剰に反応することで起こります。免疫力が弱いのではなく、Th1/Th2のバランスが乱れている状態と考えられています。
- 自然免疫と獲得免疫の違いは何ですか?
- 自然免疫は生まれつき備わる第一線で、異物の種類を問わず素早く排除します。獲得免疫は一度侵入した異物を特異的に記憶し、次回以降に速く対応する仕組みで、細胞性免疫と液性免疫(体液性免疫)に分かれます。
- 液性免疫(体液性免疫)と細胞性免疫の違いは?
- 液性免疫はB細胞がつくる抗体で血液・体液中の異物を排除する仕組み、細胞性免疫はキラーT細胞などが感染細胞を直接攻撃する仕組みです。アレルギーでは主に液性免疫(IgE抗体)が関わります。
- Th1・Th2バランスとアレルギーはどう関係しますか?
- Th2細胞が優位に傾くとIgE抗体が過剰につくられ、アレルギー反応が起こりやすくなると考えられています。腸内環境を整えることが、このバランスを支える一助になるとされています。
- 腸内環境とアレルギーには関係がありますか?
- はい。免疫細胞の約6〜7割は腸に存在するため、腸内環境が乱れると免疫バランスも崩れやすくなり、アレルギー発症の一因になると言われています。
- アトピー性皮膚炎はどういう仕組みで起こりますか?
- アレルギー体質や肌のバリア機能の低下という内的要因に、アレルゲン・乾燥・汗・ストレスなどの外的要因が重なって発症すると考えられています。免疫の型としては、IgEが関わるI型とTリンパ球が関わるIV型の混合型とされます。
- なぜアレルギーは増えているのですか?
- 遺伝は急に変わらないため、住環境・食環境・衛生環境の急速な変化が主因と考えられています。乳幼児期に微生物にふれる機会が減ると免疫がTh2に傾きやすくなるという「衛生仮説」や、腸内細菌など常在菌の多様性低下を重視する考え方が提唱されています。
まとめ
アレルギーは、免疫が過剰に反応する複雑な現象で、Th1/Th2バランスとIgE抗体が深く関わっています。アレルゲンを避ける環境づくりに加えて、免疫細胞の多くが集まる腸内環境を整えることが、免疫バランスをサポートし症状をコントロールする土台になります。
アレルギーと腸内環境の全体像、子どもの予防については、以下のまとめページで解説しています。
▶ アレルギーと腸内環境まとめ|子どもの予防・乳酸菌の最新知見
本記事は研究結果や一般的な知見をもとにした情報提供を目的としており、医療行為や治療を目的としたものではありません。症状がある場合は医師や専門家にご相談ください。









