アレルギーについて
人の体には、外部からウイルスや細菌などの異物(抗原)が侵入してきた際に、抗体をつくって異物から体を守る「免疫」という機能があります。
例えば、はしかなどは1度かかると、2度目以降は、はしかウイルスに対する抗体ができているためかかりません。
ところが、人の体に無害であるはずの抗原(花粉や食べ物など)に対して抗体がつくられ、この特定の抗原に対して免疫が過剰に反応することがあります。これがアレルギーです。
抗原の中でも特にアレルギーを引き起こしやすいものを総称して「アレルゲン」と呼びます。
近年、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、花粉症(アレルギー性鼻炎)、食物アレルギーなどのアレルギー疾患が若年層を中心に増加していて、国民の2人に1人がなんらかのアレルギー疾患を持っているとも言われています。
アレルギー発症のメカニズム
実は、アレルギー発症のメカニズムについて、100年以上も前から様々な研究が行われていますが、まだまだ不明な点も多く十分に解明されていません。
一般的には、アレルギー疾患の発症や増加・悪化をもたらす二大要因として、遺伝的因子と環境的因子が考えれられています。アレルギー疾患の罹患率は、開発途上国に比べて先進諸国の方が高いことや、農村部に比べて都市部の方が高いことが疫学研究で報告されています。また、遺伝的因子は急速に変化することは考えれないため、アレルギー増加の要因として近代化に伴い急速に変化してきた環境的因子(住環境、食環境、衛生環境、水・大気・土壌環境)の影響が大きいと考えらます。
主なアレルギー疾患の症状とメカニズム
アレルギーは、アレルゲンの種類によって、引き起こされるアレルギー反応も違います。
アレルゲンの種類には、花粉・食べ物・薬物・ホコリ・ダニなどがあり、アレルゲンによって、じんましん・皮膚炎・ぜん息・発熱などの反応が引き起こされます。
アレルギー反応の種類はⅠ~Ⅳ型までの4つの型に分類され、一般的なアレルギー疾患の多くはI型のアレルギー反応による疾患を指します。
I型アレルギー
I型アレルギーは、即時型でアレルゲンが作用して15分~2時間ぐらいの短時間で反応が起こります。1度目のアレルゲンの侵入によって多量に作り出されたIgE抗体が、再度アレルゲンが侵入してきたときに反応し、その結果、肥満細胞(マスト細胞)から化学物質(ヒスタミンなど)が放出されることで、アレルギー反応が引き起こされます。
I型アレルギーは、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、花粉症、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎などのアレルギー疾患と深く関わっています。
Ⅱ型アレルギー
Ⅱ型アレルギーは、何らかの原因で自分の細胞表面が抗原と認識されて、自分の細胞に対する抗体が作られ、自分の細胞を攻撃してしまう細胞障害型です。
代表的な疾患には、自己免疫性容血性貧血、グッドバスチャー症候群、重症筋無力症、橋本病、血小板減少症、顆粒球減少症、新生児容血性黄疸などがあり、Ⅱ型に対してさらに細胞を刺激するものをⅤ型(刺激型)として分類され、甲状腺を刺激するパセドウ病などがあります。
Ⅲ型アレルギー
Ⅲ型アレルギーは、血液中のタンパク質が抗原となり、それに対するIgG抗体が結合してできる免疫複合体が、血液中を流れ血管の壁や組織に沈着することによって引き起こされるため、アルサス型や、免疫複合型とも呼ばれます。
免疫複合体が沈着すると、補体や好中球というリンパ球が働き、それによって細胞や組織が攻撃されることで炎症を引き起こします。代表的な疾患は、関節リウマチ、血清病、過敏性肺炎、ループス腎炎(慢性糸球体腎炎)、全身性エリテマトーデスなどがあります。
Ⅳ型アレルギー
Ⅳ型アレルギーは、遅延型でアレルゲンを体内に取り込んでから半日~数日経って反応が起こります。Ⅳ型アレルギーは、抗体が関与する免疫は関係なく、血液中に存在する細胞の一種であるTリンパ球が起こすアレルギーで、代表的な疾患は接触性皮膚炎です。
アトピー性皮膚炎は、Ⅳ型とも関係があるとされ、Ⅰ型とⅣ型の混合型とも考えれています。
気管支喘息の症状とメカニズム
気管支喘息とは、気道に慢性の炎症がおき、それにより気道が狭くなる気道狭窄になり、咳やゼ―ゼーヒューヒュー音がする喘鳴、呼吸困難を繰り返す呼吸器系の病気です。
この気道狭窄は、自然に、または治療によって元の状態に戻りますが、治療をせずに放置すると、繰り返し起きる炎症により気道の構造が変化し、元の状態に戻らなくなります。
気管支喘息の慢性炎症は、好酸球やリンパ球、肥満細胞などの白血球と、気道を構成する細胞が関係して、さまざまなアレルゲンや環境変化に対し過敏に反応する(気道過敏性)ようになります。
アレルゲンには、ダニやハウスダスト、イヌやネコなどのペットのフケや毛など様々です。これらに対してアレルギー反応があるかを調べるにはIgE抗体検査があります。また、気候などの環境変化、ストレスやアルコールなどでも起こり、小児の場合は運動や冷たい空気なども刺激になります。喘息の原因は複雑なので、専門医によく相談し早めに適切な診断を受けて治療するようにしましょう。
花粉症の症状とメカニズム
花粉症は、花粉を原因として引き起こされるアレルギー反応によって、風邪ではないのに鼻水やくしゃみ、鼻づまりの鼻の症状のほか、目のかゆみといった症状がでる疾患です。
花粉症の場合は、花粉が飛散している時期だけ症状を起こしますが、アレルギー性鼻炎の場合は、原因がダニやハウスダストなどであるため一年を通して症状を繰り返します。
人は、アレルゲンが鼻粘膜から侵入すると、様々な細胞の作用を経てIgE抗体を作ります。花粉症の場合は、特定の花粉に反応するIgE抗体が大量に作られています。このIgE抗体は、鼻や目の粘膜にある肥満細胞に付着します。
特定のアレルゲンに反応するIgE抗体が作られている状態で、再びアレルゲンが侵入してくると、肥満細胞に付着したIgE抗体とアレルゲンが結合して、肥満細胞からヒスタミンなどのアレルギー反応を引き起こす化学物質が放出されます。
これらの化学物質が鼻や目の粘膜を刺激してくしゃみ、鼻水、鼻づまりを、目のかゆみや充血などのアレルギー症状を引き起こします。
アトピー性皮膚炎の症状とメカニズム
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が皮膚に繰り返し起こる病気です。症状が出やすい部位は、目のまわり、耳のまわり、首、肘や膝のくぼみなど関節など。かゆみが強いため、掻きすぎることで、どんどん症状が拡大し悪化していきます。重症化すると、腫れたり皮が剥けて落ちたりといった症状になります。
アトピー性皮膚炎は、幼小児の12%程度と子供によく見られる疾患で、患者数の80%は軽症、15%が中等症、5%が重症・最重症に分布します。80%は5歳までに自然と軽快しますが、軽快しないで持続しながら悪化するタイプ、いったん軽快しても思春期や社会人になってから再発重症化するタイプなど、経過には個人差があります。
アトピー性皮膚炎は、花粉症や食物アレルギーとは異なり、食べ物やその他のアレルギーがあるから必ず発症するという病気ではありません。アレルギーを起こしやすい体質であったり、皮膚のバリア機能が不十分な人に発症する皮膚の病気です。
アトピー性皮膚炎の発症メカニズムはとても複雑で、アレルギー体質や肌のバリア機能の低下といった内的要因と、アレルゲンや生活環境、ストレスなどの外的要因などが重なることで発症すると考えれています。
食物アレルギーの症状とメカニズム
食べ物によって、蕁麻疹や湿疹、嘔吐、下痢、咳、喘鳴などの症状が引き起こされる疾患です。
そして、症状が皮膚や呼吸器、循環器、消化器などの臓器に出ると「アナフィラキシー」と呼びます。重篤な場合、血圧低下や意識障害など命を落とす危険性もあります。
通常、食べ物は異物として認識されずに栄養として吸収されるものですが、免疫に問題があったり、消化吸収機能が未熟な状態だと食べ物を異物として認識してしまうことがあります。
異物として認識された食べ物、正確には、食物中に含まれるたんぱく質(アレルゲン)を排除するために、アレルギー反応が起こります。また、腸から吸収されたアレルゲンが血液中を流れ全身に運ばれることで様々な症状が現れます。
増えているアレルギー疾患
戦後、日本人の生活環境は大きく変わりました。食事は野菜と魚中心の食事から肉中心の西洋風になり、住宅は通気性のよい昔ながらの住まいからマンションのような密閉性の高いものへと変化してきました。さらに、車の排気ガスや工場の煤煙などの大気汚染問題。
こうした生活環境の変化は、アレルギー疾患の増加の原因になっていると考えられています。実際に、ここ数十年の間に、アトピー性皮膚炎や花粉症、気管支喘息などのアレルギー疾患で悩む人は大変な勢いで増えています。アレルギーの原因が遺伝によるもと考えるならここまで急激に増えることは考えられません。やはり、環境的因子が影響しているのでしょう。
まとめ
現代人を悩ませている様々なアレルギー症状は、アトピーや花粉症だけでなく、気管支喘息なども含めて症状は様々です。また、その発症メカニズムはとても複雑で、未だに解明されていなこと多々あります。
はっきりとわかっていることは、アレルギーには免疫が関係していること。そのため、アレルギーが厄介なのは完治が難しいことです。アレルギー対策としてできることは、原因となる抗原への接触を減らす、生活環境を見直すこと。規則正しい生活やバランスのよい食生活は、とても重要です。日常生活で症状をコントロールしていく努力をすることが大切です。