本格的な寒さを迎えるこれからの季節。外はもちろん、暖房をつけることが多い室内も乾燥しています。空気の乾燥は、のどや鼻を痛めたり、肌荒れの原因になることはよく知られていますが、口臭がきつくなることもご存知ですか?本当の原因と、唾液と腸内環境の関係を知って予防とケアを。
冬に口臭がきつくなる原因
冬は口臭がきつくなります。その原因は空気の乾燥です。
空気が乾燥すると、いつもは唾液で湿っているはずの口の中も乾燥します。
唾液には、細菌の活動を抑える働きがあるため、口の中が乾燥すると口臭の元を作る細菌が増加し、その結果、口臭がきつくなてしまうのです。口の中が乾燥しているときの口臭は、硫黄のようなにおいがします。
口臭チェックの方法
ビニール袋に息を吐いて溜め、1分ほど経ってからビニール袋の中のにおいを嗅ぎます。においを嗅いで不快に感じなければ大丈夫です。
冬の口臭は生理的なもの
日本口腔外科学会では、口臭のタイプを以下の5つに定義づけられています。
1.生理的口臭
2.飲食物・嗜好品による口臭
3.病的口臭
4.ストレスによる口臭
5.心理的口臭
その中でも、口の乾燥による冬の口臭は「生理的口臭」に該当します。
生理的口臭とは、誰にでもある口臭で、起床直後や空腹時、緊張時などは特に口臭が強くなります。生理的口臭の原因は、唾液の分泌が減少することで細菌が増殖して口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC)が多く作られてしまうからです。唾液の分泌が減少する原因はさまざまですが、冬は特に空気が乾燥しているため生理的口臭がきつくなりやすいのです。
冬の口臭を抑えるためには
乾燥による冬の口臭を抑えるには、口の中を潤すことが効果的です。水分を摂って口の中を潤すだけでも口臭を予防する効果が期待できます。また、空腹や緊張によっても唾液の量が減るので、日頃からこまめな水分補給を心がけるといいでしょう。
口臭予防を目的としたガムやタブレット菓子などが販売されていますが、実は含まれている香料や消臭成分よりも唾液の分泌に予防効果の方が大きかったりします。それだけ、口臭予防には、唾液の量が重要だということです。
就寝時と起床時の口臭予防
就寝中は口の中が乾燥しやすく、起床時には最も口臭がきつくなりがちです。就寝前に歯みがきをすると口の中の細菌が減るため翌朝の口臭を抑えることができます。また、就寝中のマスクを着用すると、口の乾燥を防いでくれるので口臭予防には効果的です。
それでも、起床時には口の細菌の数は最も増加します。起きてすぐに水や白湯を飲む人がいますが、これは就寝中に増加した細菌をそのまま飲み込むことになるので、起きたらまず最初に、口の中に溜まった唾液を吐き出して口をゆすぎ、歯みがきをしてから水を飲むようにしましょう。
唾液と腸内環境の関係
唾液の分泌量が増えると口臭が消えます。
ですが、近年、唾液には消化液として役割だけでなく、脳卒中、がん、肥満、歯周病などの生活習慣病予防、そして快眠・リラクゼーション、肌の若さをキープするアンチエイジング、さらにインフルエンザ、誤嚥性肺炎などの感染症予防などにも深く関与していることがわかってきました。
唾液は量と質が重要
唾液の主成分は水ですが、その中には細菌やウイルスを防いだり、粘膜を保護したりと多くの生理活性成分が含まれています。そして、唾液の働きに重要なのは「量と質」です。
健康な人の場合、1日で1リットルもの唾液が分泌され、口の中を清潔に保ちながら、食道や消化器官なども保護して細菌の攻撃から守っています。そして、唾液にはインフルエンザウイルスや大腸がんの予防効果がある抗菌物質のIgAや、体や肌の老化を遅らせる抗酸化作用のあるラクトフェリンなどの成分が含まれています。唾液の質は、こうした成分が唾液中に分泌されているかいないかで決まります。
唾液の質と腸内環境の関係
唾液の質と腸内環境は密接に関係しています。
実は、腸と唾液腺は影響し合っていて、腸内環境が活性化すると唾液腺も刺激されてIgAの含有量が増えます。
ヨーグルトを毎日約110g食べ続けると、2か月後には唾液量とIgA含有量が増えることが実験でも証明されていて、これには乳酸菌が腸内環境によい影響を与えることが考えられています。また、乳酸菌だけでなく食物繊維にも腸管を刺激して唾液中のIgAを増やす作用があります。
腸内環境を良くする以外にも、食事が唾液の質に与える影響は大きく、「茶葉に含まれる抗酸化成分カテキンを摂るとIgAの量が増える」「シークワーサーや大豆食品も抗酸化作用の高い唾液を作る」「アーモンドやくるみなど、必須アミノ酸の1つであるトリプトファンを多く含む食品を摂ると睡眠を促すメラトニンが唾液に増える」といったことがあります。
反対に、レモンや梅干しなど酸味の強い食事は、唾液の量を増やすためにいいとされていますが、歯の成分を溶かす危険性もあるため、過剰な摂取は避けた方がよさそうです。また、揚げ物など脂質の多いものを食べすぎると、唾液中のIgAを減少させ、免疫力低下につながるので要注意です。
唾液の量を質をアップするポイント
- 水分をこまめに摂る
- 食事はよく噛んで食べる
- 乳製品を毎日摂取する
- 起床後すぐに歯みがきをする
- 唾液腺のマッサージをする
健康な人の1日に出る唾液の量は、1~1.5リットル。それと同じ量の水分をこまめに摂取しましょう。
よく噛んで食べることは表情筋の発達を促し、自然に唾液腺のマッサージにもなるので唾液の量が増えます。また、虫歯を予防する重炭酸塩や免疫力を高めるIgA、ストレスを緩和する成分などの分泌も期待できます。
乳製品には唾液の分泌を促し、抗菌物質IgAの濃度を高める作用や、骨粗鬆症の予防やリラックス効果、整腸作用などが期待できます。また、腸内環境の改善には、毎日一定量の乳酸菌を継続して取り続けることが大切です。
口の中を常に清潔に保つためには、歯みがきは欠かせません。口の中の細菌は、起きているときは唾液によってコントロールされていますが、睡眠中は唾液の量が少なくなるため、菌が増加しています。就寝前の歯みがきも大事ですが、起床後すぐの歯みがきが最も重要です。
耳の下より少し前の位置に唾液腺のひとつである耳下腺があります。そこに、3本の指をあて中心に円を描くようにゆっくりマッサージをします。口の中が渇いているなと感じたときにやってみてください。
3ヶ月以上の口の乾燥は要注意!
口臭だけでなく、口の中の乾燥が気になる方は「ドライマウス(口腔乾燥症)」の可能性があります。
以下のような症状が出た方はドライマウスである可能性があります。
- 口の中がいつもねばつく
- クッキーなど乾いたものが食べづらい
- 口が常に乾いてて会話しづらい
- 入れ歯がすぐに落ちてしまう
- 口の端や舌がひび割れて痛い
ドライマウスが続くと、様々な病気の原因にもなるので、これらの症状が3ヶ月以上続いている方は特に注意が必要です。
まとめ
気になる冬の口臭。冬の口臭の原因は空気の乾燥ですが、口臭の裏側には様々な体の不調が隠れていることもあります。口の中なの乾燥が長く続いたり、口臭がなかなか消えない場合は、他のことが影響しているかもしれません。今回、紹介した唾液の量と質をアップすることで、様々な健康効果も期待できるので、ぜひ、試してみてください。
また、以下の記事では口臭の種類や原因について詳しく解説していますので、あわせてお読みください。