「朝になるとお腹が痛いと言う」「急にイライラしやすくなった」「アトピーや肌荒れがひどくなった」—。子どものこうしたサインは、単なるわがままや体調不良ではなく、気づかないうちに溜め込んでいる「ストレスのSOS」かもしれません。
特に、腸の不調(腹痛や便秘、下痢)が心の状態と連動する現象は、近年「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」という専門分野で研究が進んでいます。子どもは大人よりも感情を言葉で表現するのが難しいため、心のストレスがダイレクトに身体、特に腸内環境に現れやすいと言われています。
本記事では、子どもの心と体のつながりのメカニズムを掘り下げ、心身の土台を内側からサポートするためのインナーケアの新常識をご紹介します。特に、ストレスで乱れがちな免疫バランスや腸内環境を整える特定の乳酸菌の可能性について、専門的な知見を交えて解説します。
→ アレルギー体質のカギを握る免疫バランスと、米由来乳酸菌の研究に関する詳細はこちら
見落とされがちな子どものストレスサインと種類
子どもが抱えるストレスの根本原因は大人とほぼ同じですが、その表出の仕方は異なります。気づかないうちに深刻な状態になる前に、親として子どものSOSに気づくことが大切です。
子どものストレスが引き起こす心身の変調
ストレスは、精神的・肉体的なひずみをもたらす刺激の総称であり、主に「心理・社会的なストレス(不安、緊張など)」、「物理・化学的なストレス(暑さ、騒音など)」、「生物学的なストレス(疲れ、病気など)」の3種類に分けられます。子どもは、このモヤモヤを「ストレス」だと認識できず、言葉で表現できないため、行動や身体の不調としてサインを出します。
子どもの主なストレスサイン
- 心の変化: イライラしやすい、怒りっぽい、落ち込みやすい、感情の起伏が激しい
- 身体の変化: 食欲不振、寝付きが悪い、便秘・下痢、頭痛、腹痛(心因性)
- 行動の変化: 登校を拒否する、つめを噛む、急に口数が減る、赤ちゃん返り
特に原因不明の腹痛や便秘は、ストレスが腸へ直接影響を与えている可能性が高く、「まさかストレスで?」と思わずに注意深く観察する必要があります。
ストレスがアトピーや肌荒れを悪化させるメカニズム
ストレスは、自律神経のバランスを乱し、結果として免疫システムや皮膚のバリア機能に影響を与えます。アトピー性皮膚炎や肌荒れを持つ子どもにとって、ストレスは症状悪化の大きな引き金となります。
- 自律神経の乱れ: 過度なストレスは交感神経を優位にし、血行を悪化させます。これにより皮膚の再生が遅れたり、栄養が届きにくくなったりします。
- バリア機能の低下: ストレスホルモン(コルチゾールなど)が過剰に分泌されると、皮膚のバリア機能を担うセラミドなどの生成が抑制され、乾燥や外部刺激への抵抗力が低下し、炎症が悪化しやすくなります[1]。
皮膚の炎症と心の問題は相互に悪影響を及ぼしあうため、心身全体をケアするアプローチが不可欠です。
腸は「第二の脳」:ストレスと腸内環境の科学
近年、腸内環境は心の健康に深く関わっていることが、専門的な研究で次々と明らかになっています。鍵となるのは、「腸脳相関」と呼ばれる脳と腸の密接なコミュニケーションです。
腸と脳を結ぶ「双方向のネットワーク」
腸と脳は、迷走神経や血液中の物質(ホルモン、免疫細胞が産生するサイトカインなど)を通じて、常に情報交換を行っています。脳がストレスを感じると、その情報が腸に伝わり、腸の運動や粘液の分泌が変化し、腹痛や便秘、下痢などの症状が現れます。逆に、腸内環境が乱れると、その情報が脳に伝わり、不安や抑うつといった精神的な不調を引き起こす可能性が示唆されています。
善玉菌とセロトニン
特に、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンは、感情の安定に重要な神経伝達物質ですが、その約9割が腸内で生成されると言われています[2]。腸内の善玉菌、特にビフィズス菌や乳酸桿菌のバランスが崩れると、このセロトニンの生成や伝達に影響が出ることが指摘されており、ストレスや抑うつ状態との関連性が注目されています。
専門的な知見:乳酸菌摂取によるストレス感受性の低下の可能性
弊社の研究では、プロバイオティクス(生きた善玉菌を含む食品)の摂取がストレス症状に与える影響についての報告がなされています。
<研究結果の引用>
研究では、特定の乳酸菌を摂取し続けたところ、脳の一部(ストレス反応に関わる部位)の血流が抑制され、ストレス感受性を低下させる可能性が示唆されました。これは、腸内環境を改善することで、善玉菌が優位な状態となり、間接的に脳からの指令でストレスホルモンの産生を穏やかにする可能性を示しています。このことから、体の中から腸内環境を整えることが、ストレスへの耐性を高めるアプローチになり得ると考えられています[3]。
このように、腸内環境の改善、つまり善玉菌(乳酸菌)のバランスを整えることが、子どもの情緒の安定やストレスの緩和に貢献する新しいインナーケアとして注目されています。
ストレスに負けない体と心の土台を作るインナーケア
子どもの心身の健やかさを支えるには、日々の継続的なインナーケアが不可欠です。特に日本人の体質や食生活に寄り添った乳酸菌を選ぶことが、継続のしやすさ、ひいては効果につながります。
日本人に馴染み深い「米由来の乳酸菌(LK-117)」の特長
日本の伝統的な発酵食品は、米や野菜などの植物由来の乳酸菌によって支えられてきました。乳製品を多く摂らない日本人の腸内環境には、こうした植物由来、特に「米」を原料とする発酵環境で育った乳酸菌が、相性が良い可能性が示唆されています。
神戸大学・兵庫県工業技術センターとの共同研究で発見された特定の米由来乳酸菌(LK-117)は、以下の点から、子どものインナーケアに非常に有用性が示唆されています。
- 日本酒「生酛」由来: 厳しい環境下で生き抜く強い力を持つ乳酸菌で、日本人の食文化と親和性が高い「米」由来です。
- 免疫・アレルギーサポート: ストレスや偏食で乱れがちな免疫バランスを整える可能性が示唆されており、アトピーや花粉症といったアレルギー体質の根本サポートが期待されます。
- 整腸作用: 腸内環境を整えることで、ストレスによる腹痛や便秘・下痢などの消化器系の不調の緩和に貢献する可能性が示唆されています。
乳製品アレルギーを心配されるお子様でも摂りやすく、また、自然な甘みで飲みやすい製品形態も開発されており、日々のストレスケアを美味しく手軽に続けられる新しい選択肢です。
乳酸菌飲料は製品によって糖分を多く含む場合があるため、過剰摂取は肥満や虫歯の原因となることがあります。摂取量には十分注意し、バランスの取れた食生活を心がけましょう。
親御さん自身のセルフケアも大切
子どものストレスサインに気づくためには、まず親自身が心身ともに健康であることが不可欠です。親がストレスを抱えていると、その緊張感が子どもにも伝わり、連鎖的なストレスとなることがあります。まずは親自身が自分の不安や疲れに目を向け、リフレッシュする時間を持つことで、心に余裕が生まれ、子どもの変化にも真剣に向き合えるようになります。
お子様と一緒に、乳酸菌飲料やサプリメントを日々の習慣に取り入れることは、親子のインナーケア習慣にも繋がり、双方の心の健康をサポートすることに繋がるでしょう。
Q&A:子どものストレスと乳酸菌に関する疑問
心因性の腹痛の場合、乳酸菌で本当に改善が期待できますか?
A. ストレスによる心因性の腹痛は、腸と脳の連携(腸脳相関)の乱れが原因の一つと考えられます。乳酸菌の継続的な摂取により、腸内環境が整い、免疫細胞や神経伝達物質(セロトニンなど)のバランスが改善することで、間接的に自律神経系の安定をサポートする可能性が示唆されています。ただし、症状が続く場合は必ず専門医(小児科、心療内科など)にご相談ください。
乳酸菌の摂取は、自閉症スペクトラム症(ASD)やADHDにも効果がありますか?
A. 現時点では、乳酸菌の摂取がASDやADHDを直接的に「治療する」という断定的な科学的根拠は確立されていません。しかし、ASDやADHDを持つ子どもたちの中には、腸の不調(便秘や下痢)を訴えるケースが多く、腸内フローラの乱れと関連がある可能性が研究されています。乳酸菌の摂取は、腸の不調を整えることで、間接的に不快感やイライラを軽減し、QOL(生活の質)の向上に寄与する可能性は示唆されています。
子どもに乳酸菌を毎日摂らせる際の注意点は何ですか?
A. 最も重要なのは「継続性」と「安全性」です。
- 継続性: 子どもが嫌がらないよう、味や形態(飲み物、タブレットなど)を選び、毎日決まった時間に摂取する習慣をつけましょう。
- 安全性: 特にアレルギーを持つお子様の場合、製品の原材料(乳成分、大豆など)を必ず確認し、米由来などアレルゲンになりにくい製品を選ぶことも検討しましょう。
まとめ:心の健康は腸から始まる
子どものストレスは、心の不調だけでなく、原因不明の腹痛、アトピー、便秘など、身体の様々なSOSとして現れます。この心と身体の連鎖を理解し、「腸脳相関」という科学的知見に基づいたインナーケアを取り入れることが、これからの子育てにおける新常識です。
日本人の体質に寄り添った特定の米由来乳酸菌を日々の生活に取り入れることは、ストレスによる乱れに負けない体の土台と、穏やかな心の健康を育むための、手軽で有効な一歩となるでしょう。親子の笑顔と健やかな成長のために、ぜひ内側からのケアを始めてみてください。
【重要なお知らせ】
心身の不調や、うつ病などの疾患が疑われる場合は、必ず小児科、心療内科、または専門のカウンセラーなど、専門家にご相談の上、適切な診断と治療を受けてください。
主な参考文献・情報源
- [1] 日本皮膚科学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018年度版.
- [2] 厚生労働省. e-ヘルスネット情報(セロトニンに関する記述).
- [3] 松田一乗 プロバイオティクスがストレス反応及び睡眠の質に及ぼす作用
- [4] 日本うつ病学会. 日本うつ病学会治療ガイドライン(児童思春期のうつ病に関する記述).
- [5] 柴田裕介・高橋俊成・山田 翼・田中伸哉. 生酛における乳酸菌のストレス耐性. 醸協, 2019; 114(4): 233-236.(菊正宗酒造株式会社 総合研究所 ほか)









