今年は、西日本では例年よりも早い梅雨の到来。
毎日どんよりとした空模様を見ているだけで、気分も落ち込んでしまいますね。
湿度や気温が高くなると、少し動いただけでも汗をかくようになります。
特に、子どもは大人と違い、汗をかいても拭いたりせずにそのままにしてしまうことが多いです。
気づくと、子どもが頭をガシガシ掻いているということはありませんか?
頭だけでなく、肘の内側なども掻きむしっている姿を見ると、「もしかして、これってアトピー性皮膚炎なのでは?」と不安にもなりますよね。
アトピー性皮膚炎だったら早くどうにかしないと…と色々調べてみても、情報が多すぎてわからない…なんてことはよくあることです。
そもそも、アトピー性皮膚炎とはどういうものなのでしょうか。
ひどい痒みが襲う「アトピー性皮膚炎」
アトピー性皮膚炎とは
日本皮膚科学会によると、「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解と繰り返す瘙痒(そうよう)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ」と定義されています。
※アトピー性皮膚炎診療ガイドラインより
アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解と繰り返す瘙痒(そうよう)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ
参考:日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018年度版
アトピー素因とは、①本人または家族がアレルギー性の病気(アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、ぜんそく、結膜炎など)を持っていること、②アレルギーと深い関係がある免疫に関係するたんぱく質の1種である物質「IgE抗体」を作りやすい体質を持っていることを言います。
つまり、「アレルギーを起こしやすい体質」の人ということです。
アトピー性皮膚炎は、アレルギーを起こしやすい体質の人や、元々皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる皮膚疾患で、肌が乾燥している状態の時に、アレルゲンの侵入や環境的要因が重なって起こると考えられています。
発症する要因
アトピー性皮膚炎の要因は、皮膚のバリア機能障害や免疫調節機能の障害などの遺伝的・体質的なものと、ダニやハウスダスト・花粉といった環境的なものとがあります。
そして、その要因が重なった時に、皮膚炎の症状が現れるのです。
元々、遺伝・体質的な要因を持っていて、そこに食物やほこり・ダニなどのアレルギー原因物質が加わってより反応が起こりやすくなったり、汗や衣服がこすれて、痒いところを掻いてしまい、肌への刺激がきっかけとなって炎症を引き起こし、更に強いかゆみが生じるということを繰り返してしまいます。
1つの要因だけでなく、いくつもの要因が重なって影響するのがアトピー性皮膚炎の特徴だといえます。
遺伝的・体質的な要因 ⇒ アトピー素因・皮膚バリア機能の低下
環境的な要因 ⇒ 食物・花粉・ダニ・ほこり・カビ・動物の毛やフケなどのアレルゲン
汗・衣類による摩擦・ひっかき傷・洗剤などの日用品や化粧品など
寝不足・過労・ストレスなど
かゆみが起こるのはアトピー性皮膚炎だけではない
上記のように、慢性的に起こるかゆみと違い、汗をかくシーズンや寒い時期だけだったり、体調が少しよくないかも…という時に起こるかゆみや肌荒れは、アトピー性皮膚炎とは違うことが多いです。
特に、最近は菌やウィルスに対する嫌悪感から、必要以上に清潔を気にするお母さんも多くなってきており、それが原因で子どもが本来獲得すべき「菌やウィルスへの耐性」を、親自らが子どもから取り上げているのが現状です。そうすることで、子どもはどんどん肌が弱くなり肌荒れなどを起こすことも少なくありません。
かゆみや肌荒れはどのようにして起こる?
肌にはもともと外部刺激から守るバリア機能というものが備わっています。
皮膚バリア機能は、外部の様々な異物(細菌やアレルゲンなど)が皮膚の中に侵入するのを防いだり、角質層の内側の水分の蒸散を防ぐ役割を担っています。
皮膚は、外側から表皮・真皮・皮下組織などに分かれており、表皮の厚さは約0.2mmで、一番外側は何層もの角質細胞が積み重なって「角質層」となっており、隙間に「セラミド」と呼ばれる脂質が埋まっています。
正常な皮膚は、角質層において皮脂や細胞内に存在する天然保湿因子や、セラミドや脂肪酸などの角質細胞間脂質が皮膚の水分量(潤い)を一定に保っています。(下図左)
しかし、乾燥した皮膚は、これらの因子が減少することで角質層が構造異常を起こし、バランスを崩してしまいます。加齢などでも「セラミド」を作る機能が低下し、角質層のレンガ構造が崩れるのです。その結果、皮膚表面から水分が蒸散しやすく、水分量も減少した状態になっています。水分を保持する機能が低下しているので、乾燥が進んでひび割れを起こします。これが「皮膚バリア機能が低下している状態」で、外部から細菌やアレルゲンが侵入しやすくなっています。(下図右)
肌を擦ってしまったり、洗顔のし過ぎや美容器具などの使い過ぎも、皮膚バリア機能を弱めてしまうことになります。
その結果、肌の表面の乾燥が進み鱗屑(りんせつ)や亀裂でざらついて肌荒れ状態に。
そして、皮膚が乾燥し皮膚バリア機能が弱まると、アレルゲンや細菌が皮膚から侵入しやすくなります。アレルゲンが侵入することで、かゆみの神経線維が活性化され、外部からの刺激を感じやすくなって「かゆみ」が発生します。
かゆみが起こると、どうしても掻いてしまいがちですが、「かゆいから掻く」といった刺激を皮膚に与えることで、皮膚症状が悪化し、知覚神経が作用して神経ペプチドを放出させ、さらにかゆみ物質のヒスタミンの分泌を促してしまいます。
掻くことで更にバリア機能が低下した皮膚は、少しの刺激でもかゆみが起こりやすくなっているので、さらに掻いてしまい、どんどんかゆみが広がっていく「かゆみの悪循環」が起きるのです。
敏感肌の可能性も
肌荒れの症状として、よく耳にするのが「敏感肌」という言葉ではないでしょうか。
「敏感肌」とは、ひとつの症状を表す言葉です。
顔だけでなく、頭皮や首、背中、手足など全身に及ぶこともあります。
症状には個人差がありますが、湿疹やかぶれ、赤みを起こしたり、ニキビや吹き出物ができやすかったりヒリヒリしたりします。
それは、紫外線や化粧品、外気中のホコリなどによって、皮膚のバリア機能が弱まってしまっていることが原因です。
このような症状が起こるトラブルのことを「敏感肌」と呼んでいるのです。
汗による肌トラブル
肌トラブルには、アトピー性皮膚炎の他に汗疹や脂漏性皮膚炎などといったものも存在します。中でも、汗が原因で起こる接触性皮膚炎は「汗あれ」や「汗かぶれ」とも言われ、汗をかいてもそのまま放置していると、皮膚がふやけて衣類などに接触し、汗にかぶれた状態となり、その汗に含まれるアンモニアや塩分が肌を刺激してヒリヒリとした痛みやかゆみが起こるトラブルです。
シャンプーやトリートメントが十分に流せておらず、それが刺激となってかゆみを引き起こす場合もあります。
子どもは汗をかいても拭かないので、汗でビショビショになった服のまま遊び続けることも多いでしょう。シャンプーも目をつぶっていられないので、手早く済ませようとしてしまいがちですが、それがかゆみに繋がってしまうこともあるので気を付けたいですね。
<肌が原因の場合の赤み・かゆみ>
汗は、健康な肌には何の問題もないのですが、少量の塩分やアンモニアが含まれていることから、肌のバリアの機能が低下している肌では刺激となってしまいます。
肌の乾燥や紫外線によってダメージを受けていると、ゴシゴシ洗いすぎたり、掻きすぎて傷ついた肌は、角質層に隙間を生じさせるため、汗やほこりなどの外的刺激が侵入しやすくなります。このような場合は、肌のバリア機能の低下が原因だと言えます。
あせもと間違いやすいのですが、かぶれは刺激で炎症が起きる状態なので面状に広がっていることが多いです。
<汗管(汗を出す部分)が原因の発疹・かゆみ>
大量の汗をかいた際に汗の管が詰まってしまい、肌の内部に溜まった汗が炎症や水ぶくれを引き起こす症状が汗疹です。汗管が詰まる深さであせもの症状が変わります。
暑い時に、体温調節をするために出る汗はエクリン腺というところから分泌されますが、このエクリン腺が詰まってしまうと、あせもの症状が現れます。
ですので、汗線の出口がある部分に赤い発疹が現れるのが特徴です。
簡単に湿疹やかぶれ・赤みを起こしてしまうのは、敏感肌が原因だったのです。
肌のバリア機能をアップ
重要なのは正しいスキンケア
敏感肌の症状を改善するには、肌のバリア機能の低下を抑えることが必要です。
では、どうすればよいのでしょうか。
一番大切なのは「保湿」です。
健康な皮膚には、角層のバリアが機能しており、このバリアによって、水分の過剰な蒸散や刺激から守っています。
しかし、敏感肌はこのバリア機能が低下しているので、水分は過剰に蒸散していく状態です。洗顔後や入浴後は特に肌の水分が減少していくので、なるべく早く保湿をしたほうがよいということになります。
大人の場合は、美容を意識して保湿剤を積極的に使いますが、子どもにとっても肌の健康を守るためには重要です。子どもが苦手な匂いだと感じる保湿剤もあるので、「お薬塗って~」と子どもが自らすすんで使えるような保湿剤を選べるとよいと思います。
その他、肌を清潔に保つために、1日に何度も入浴したり、ゴシゴシ洗ったりすることも、逆に肌のバリア機能が損なわれてしまいます。
紫外線も日焼けを起こしたり、乾燥に繋がるので、外に遊びに行く時は日焼け止めを塗ったり、必ず帽子をかぶるなどの対策をしっかりしたほうがよいでしょう。
肌のターンオーバーのサイクルを整える
健康な肌を保つために、肌の細胞が入れ替わるターンオーバーが正常に行われることが重要となります。肌のターンオーバーが乱れる原因のひとつに、腸内環境の悪化があります。
腸内で善玉菌が減少し、腸内フローラのバランスが乱れると、悪玉菌が有害物質を作りだし、様々な不調が起こります。悪玉菌によって、肌の細胞が上手に生まれ変われないのです。これが原因となり、肌のバリア機能も低下して肌荒れやかゆみが引き起こされるというわけです。
つまり、腸内フローラのバランスを善玉菌:日和見菌:悪玉菌=2:7:1に整えることで、敏感肌も改善に導けるということです。
現状、肌荒れやかゆみが起こっているということは、悪玉菌が優位になっているということ。これを正常な状態に戻すには、乳酸菌などの善玉菌を積極的に摂ることが良いと言われています。また、善玉菌のエサとなるものと一緒にとることで、より効果が上がります。
ですので、乳酸菌を摂取するときは、エサとなるオリゴ糖や食物繊維を一緒に摂取して腸内環境を整えるとよいでしょう。
乳酸菌で健やかな肌に
乳酸菌を摂取するとよいとお伝えしましたが、一番のオススメは発酵食品です。
下記の記事でも、発酵食品についてはオススメをいくつかあげましたが、子どもが食べるとなると話は別です。(日本酒など飲めませんし…)
⇒ 発酵食品のオススメはヨーグルトではなかった!
日本酒の代わりに、同じお米の発酵食品である米麹甘酒はいかがでしょうか。
米麹甘酒は、自然な甘みの米麹を糖化させて作っており、ノンアルコールですので安心です。その上、エサとなるオリゴ糖も含まれており、腸内に善玉菌として存在しているビフィズス菌を増やす作用も認められています。
米麹を買ってきて、炊飯器やヨーグルトメーカーなどで手作りすることも可能ですが、スーパーでも色々な種類のものが売られているので、忙しい働くお母さんも手軽に購入できます。
暑くなってくると、アイスクリームを食べたくなりますよね。米麹甘酒に豆乳などの乳製品を混ぜて凍らせるだけで、簡単にアイスクリームができちゃいます。砂糖を入れなくてもほんのり甘くて、お子様にぴったり。卵や牛乳のアレルギーをお持ちのお子様には、米麹甘酒だけを凍らせれば、手軽に美味しく身体によいおやつの完成です。
もっと手軽に乳酸菌を摂る方法
腸内環境は、毎日乳酸菌を摂取し続けることで正常化していくのですが、毎日これを用意するとなると大変でもあります。そんな方にオススメなのは、乳酸菌を含むサプリです。おやつ感覚で摂取することが可能なので、お子様も苦にはならないでしょう。もちろん、子供も大丈夫なものを選びましょう。
親は、子どもが痒がる姿を見れば、「軽減させてやりたい」と思うもの。
症状を和らげる為に、対処法を必死に行い、素直に聞いてくれない子どもに対して「あなたのためにやっているのに!」と怒ってしまうこともしばしば。そうすると更に嫌がって結局何もできない…なんてことにもなりかねません。
シャンプーの際に、液剤が残らないように洗い流したり、洗顔や入浴後に保湿をしっかりしたり、発酵食品を毎日摂ることは、言葉では簡単ですが、全てをきっちりするのは、いきなりでは難しいでしょう。逆に、親がストレスを溜め込む結果になる可能性もあります。
心配にはなりますが、アトピー性皮膚炎と敏感肌とは違います。
少しずつで大丈夫です。
子どもの症状が軽くなるよう、できることからはじめてみましょう。