まもなく花粉症の季節がやってきます。なるべく薬に頼らずに花粉症を予防したいという方も多いはず。最近、よく聞かれるのが「花粉症にヨーグルトの乳酸菌が効くのは本当ですか?」という質問。そこで、今回は花粉症と乳酸菌について解説していきます。
乳酸菌の花粉症への効果
ここ数年、春が近づくと話題になるのが花粉症とヨーグルトの関係。ヨーグルトに含まれている乳酸菌が花粉症に効くと言われています。そんな、乳酸菌の花粉症への効果を見ていきましょう。
花粉症について
花粉症とは、スギやヒノキなど植物の花粉に対して免疫が過剰に反応することで起こるアレルギーのことです。アレルギーを引き起こす物質は、花粉以外にも、卵や小麦、ホコリなどがあり、人によってさまざまです。これらのアレルギーを引き起こす物質のことを総称して「アレルゲン」と呼びます。
アレルゲンの中でも、多くの日本人を悩ませているのが「花粉」です。
また、人によって出る症状や症状の程度はさまざまですが、一度、花粉症になってしまうと、体が花粉症の原因となる花粉を取り込むたびに、鼻水やくしゃみ、かゆみなど辛い症状が引き起こされます。
ちなみに、花粉症はスギやヒノキだけでなく、ブタクサやイネなど夏から秋にかけて生息する植物の花粉でも起こります。なぜか、秋になると目が痒くなったり鼻水が出るようなときは花粉症の可能性があります。
春は、スギやヒノキなどが一斉に花を咲かせ花粉が飛散し、多くの人が一斉に花粉症を発症するため花粉症のイメージが強いですが、秋の花粉症も年々増加傾向にあるため注意が必要です。
花粉症は体で何が起こってる状態?
花粉が体内に侵入し、免疫が花粉を異物として認識すると、その花粉に対応するためのIgEと呼ばれる抗体が作られます。個人差はありますが、やがて花粉に対する抗体が十分な量になると、再び花粉が侵入してきたときに、免疫が反応して花粉症を発症します。
免疫が、花粉を必死に外に追い出そうとするときに、花粉症の症状を引き起こす原因となるヒスタミンなどのアレルギー誘発物質が放出されます。
花粉症の引き金を引くのは、免疫反応で重要な役割を持つ肥満細胞です。肥満細胞は、私たちの皮膚や粘膜など全身の組織に広く分布し、花粉とくっつくことでヒスタミンを放出します。その肥満細胞と花粉をくっつけるのが「抗体」です。
最近では、花粉の飛散量が増加傾向にあり、抗体が十分な量になるまでの期間が短く、大人だけでなく子供でも花粉症を発症するようなっています。
花粉症は、少し前までは遺伝的な要因が大きいと考えられていましたが、ここ10年間で有病率が約10%も増加していることから、環境的要因など影響もあると考えられています。そのため、薬などによる対症療法とは別に、体質改善のために食事による民間療法も重要視されています。
特定の食べ物を摂り続けたところ症状が軽くなったという経験談などがさまざまなメディアで取り上げられています。その代表格が、乳酸菌が多く含まれているヨーグルトです。
どうして花粉症にヨーグルトが効くと言われるのか?
ヨーグルトにも含まれるている乳酸菌には、腸内環境を整えてることで花粉症などの症状を軽減し、また毎日食べることで予防にもつながると言われています。また、腸内の善玉菌が増えることで、IgE抗体の産生が抑えられるなどとも言われています。
こういったことが言われる背景には、免疫と腸の深い関係が影響しています。
腸管の内側では免疫に関わる多くの細胞が作られ、体中の免疫細胞の約7割が腸に集中し、免疫システムを支えています。そして、免疫細胞の形成には、腸内細菌が大きく関わっています。
つまり、腸内細菌のバランスが悪化すれば、免疫細胞の産生が乱れ花粉症を招く原因になるとも考えれ、腸内環境を整えてくれる乳酸菌が効くと考えられています。
しかし、実際には厚生労働省によるアレルギー性疾患に対する民間療法の有効性などについて調査研究では以下のように記載されています。
使用頻度が増加しているヨーグルト、乳酸菌剤ですが、一般医療機関を受診しているアレルギー性鼻炎患者さんの調査では、効果ありと判断されている方は30%以下です。
この厚生労働省の調査は、2007年頃に行われたものなので少し古いのですが、乳酸菌が花粉症に効くというデータを示すにはまだまだ検討が必要なようです。
乳酸菌の摂取は花粉症に効かない?
だからといって、乳酸菌が花粉症に効かないと判断するのはまだ早いようです。その理由を知るために、免疫の仕組みについてもう少し詳しく見ていきましょう。
私たちの体の免疫細胞には、免疫システムをコントロールする司令塔の役割を果たす「ヘルパーT細胞」があり、これにはTh1(1型)とTh2(2型)の2種類あります。どちらかが増えるともう片方が減る仕組みになっていて、この2種類の免疫細胞がバランスを保ちながら免疫システムをコントロールしています。
Th2から産出されるIL-4(インターロイキン4)という化学伝達物質は、IgE抗体の産出を促すため、花粉症の人はTh2がTh1より優位な状態(アレルギー体質)になっていることが考えられています。
花粉症予防のために、乳酸菌を摂取するのであれば、このような免疫調整機能をもつ特定の乳酸菌を摂取することをオススメします。
日本人に合う進化系乳酸菌
乳酸菌は糖から乳酸をつくる菌の総称で、かなりたくさんの種類があります。
そして、私たちの腸には、100種類以上、100兆個を超える細菌が棲息し、腸内に定着している細菌をまとめて腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼び、この腸内細菌叢は1人1人異なります。
無菌状態の子宮にいた赤ちゃんの腸には、腸内細菌はいません。その後の、産道を通ってお母さんの菌を受け継ぎ、生活環境や食生活によって徐々に、腸内細菌叢が形成されていきます。親子でも腸内細菌叢は異なります。また、腸内細菌叢の原型は3歳までに作られると言われていて、その後、摂取した細菌は腸に定着することはほとんどありません。
腸内細菌を活性化するためには、自分の腸内細菌と相性のいい乳酸菌を見つけることがとても重要になります。乳酸菌との相性が良ければ、乳酸菌が腸を通過する間にしっかりと活躍してくれます。
特に、日本人は、古くから味噌や漬物などの植物性の発酵食品を食べてきたと日本食の歴史から、ヨーグルトなどに含まれている動物性乳酸菌よりも、植物性乳酸菌の方が相性がいいと考えられています。
まとめ
花粉症の症状の重い場合や、今すぐに症状を何とかしたいという場合は薬に頼ることも必要ですが、花粉症の体質を根本的に治す薬はありません。そのため、根本的な体質改善については、毎日の食事や生活習慣などを改善していく必要がります。
ヨーグルトなどに含まれている乳酸菌が花粉症に効くという確実なものはありませんが、現在では特定の乳酸菌に、花粉症に対する効果があることも発見されています。それらの乳酸菌を摂り入れながら、腸内環境を整えて花粉症を予防する方が健康的な気がします。乳酸菌の摂取は毎日続けることが重要で、薬のような即効性はないので花粉症が流行する2、3ヶ月前から始めるのがオススメです。