かゆみの原因「あせも」について
気温や湿度が高くなると起こることが増える、首回りのしつこいかゆみや赤み。皮膚トラブルといえば「あせも」。あせもは、子供によくみられますが、大人でも、悩む方が増えています。まずは、あせもの症状や原因などを詳しく解説していきます。
あせもは汗による炎症
日本の夏は、高温多湿で汗をかきやすいです。汗をかくことを不快に感じる人も多いですが、汗には蒸発するときに身体の熱を奪い体温が上がりすぎるのを防ぐ役割があり、体温調節のために欠かせません。また、汗には、皮膚表面を弱酸性に保つことで細菌の繁殖を抑制したり、体内の老廃物を排除したり、皮膚の潤いを保つ役割もあります。
しかし、大量の汗をかき続けてそのまま放置しておくと、汗に含まれる塩分やほこりなどが汗管を詰まらせ、皮膚の内側(表皮)に汗が溜まると、溜まった汗が周辺の組織を刺激して炎症を起こします。これが「あせも」です。
あせもの症状は3タイプ
あせもは、正式には「汗疹(かんしん)」と呼ばれ、炎症が生じた部位によって「水晶様(すいしょうよう)汗疹」、「紅色(こうしょく)汗疹」、「深在性(しんざいせい)汗疹」の3タイプに分けけられます。
水晶様(すいしょうよう)汗疹
皮膚のごく浅い部分(表面近く)にできる透明または白っぽい水滴のような小さな水ぶくれです。大きさは1~3㎜ほどで、炎症が起きていない状態のためかゆみもほとんどなく、気づかないうちに自然と完治している場合もあります。水晶様汗疹は、乳幼児によく見られるタイプです。
紅色(こうしょく)汗疹
紅色汗疹が、一般に「あせも」と呼ばれている汗疹です。水晶性汗疹よりも皮膚の深いところで汗管が詰まり炎症を起こし、皮膚の表面には小さな赤い水ぶくれができます。熱感やかゆみを伴い、汗をかくとチクチクとした刺すような痛みを感じることもあります。
深在性(しんざいせい)汗疹
深在性汗疹は、熱帯地で多く、日本ではほとんどみられません。紅色汗疹よりも、さらに皮膚の深い部分で汗管が詰まって炎症が起こります。かゆみはほとんどありませんが、重症度が高く深刻です。
あせもによる感染症に要注意!
水晶様汗疹は、あまり気にしなくても、やがて水ぶくれが破れて薄い皮が剥がれ自然に治っていきます。しかし、かゆみを伴う紅色汗疹は、どうしても掻いてしまうことがあります。掻くことで皮膚に傷がつき、そこから細菌が侵入して、とびひなどの感染症を起こすことがあるので注意が必要です。
※「とびひ」とは、伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)という細菌による皮膚の感染症で、夏に代表される皮膚疾患のひとつです。
あせもは大人でも起こる!?
あせもは、大量の汗をかいてそのまま放置しておくと発症しやすくなります。あせもが乳幼児に多くみられる理由は、汗を分泌する汗腺の数にあります。成人の場合、汗腺の数は230~250万個といわれていますが、実は乳幼児でもその数はほとんど同じです。そのため、体表面積あたりの汗腺の密度はかなり高く、体表面積に対して大人の2~3倍もの汗をかいていることになります。
しかし、ここ近年の猛暑やエコ意識などによって、汗をかきやすい状況が増え大人のあせもも増加しています。事務作業で、背もたれのあるイスにずっと座っていたりすると、背中などに汗をかいたままの状態が続き、それがあせもの原因になります。また、アトピー体質だったり、乾燥肌や敏感肌の人は、皮膚を保護するバリア機能が低下しているため、少しの汗でも長時間肌に付着したままになっていると、あせもを起こしやすくなります。
あせもができやすい部位
特にあせもができやすい部位は、首や、肘の内側、膝の裏側などの汗が溜まりやすく乾きにくいところ、また、男性に多いのがワイシャツの襟があたる首の部分や、ベルトをしている腰回り、女性に多いのが下着で締めつけている部分です。
あせもとアトピーの見分け方
あせもは、皮膚の状態によっては、夏に悪化しやすいアトピーと区別が付きにくいことがあります。実際に、多くの方が子供のからだにできたかゆみを伴う赤いブツブツをみて、見分けがつかず悩まれているようです。
あせもの原因は汗なので、汗をかきやすく蒸れやすい場所にできます。そのため、それ以外の場所に症状がみられる場合は、あせもではない可能性が高くなります。アトピーの場合は左右対称に症状が出ることが多いので、それで見分けることもできます。
実は、診察を受けた病院によっても診断が異なることがあります。これは、検査の数値で〇〇以上ならアトピー、〇〇以下ならアトピーという明確なものがないからです。基本は皮膚を見て判断するため、症状がひどい場合はアトピーと判断されたりしてしまうのです。
アトピーは良くなったり悪くなったりを繰り返すのに対して、あせもは、特別な治療を行わなくても数日~1週間で症状が治まります。しかし、掻くことによって症状が悪化しやすいので、あせもやアトピーなどの症状が出た場合は、掻かないようようにすることが重要です。
あせもになったら?
まずは、かゆみがあっても掻かないことです。あせもができたら放置せず、よく洗って清潔にし、かゆみ止め成分が配合された治療薬を塗ります。あせもは多くの場合、水晶様汗疹なら数日、紅色汗疹だと1週間ほどで治ります。しかし、市販薬などを使っても改善しなかったり悪化するような場合は、とびひなどの細菌による感染症が起こっていたり、汗に含まれる塩分やアンモニアなどが皮膚を刺激して起こる接触性皮膚炎だったりと、他の皮膚病の可能性があります。あせもがなかなか治らなかったり、症状が悪化するような場合は、すぐに皮膚科を受診するようにしましょう。
秋まで待てばあせもは治る?
あせもといえば、夏の暑い季節に発症するイメージがあると思います。
現に、夏場は汗をかきやすく、そのまま放置することによって肌に刺激を与えることとなり、炎症を起こしてあせもへと繋がってしまいます。
では、涼しくなる秋になれば、汗もそれほどかかなくなりますし、夏にあせもで困っていたとしても、自然に治ってしまうのでしょうか。
答えはNOです。
上記であせものタイプをご紹介しましたが、炎症が起きていない状態の水晶様汗疹であれば、自然に治ってしまうかもしれません。しかし、炎症が起きている赤いあせもは、しっかりケアをしなければ、秋だろうが冬だろうが治らないままです。
あせもは、汗をかかない季節であれば放置していても大丈夫…というわけではないのです。
秋冬はあせも+乾燥にも注意
汗をあまりかかずに済む秋や冬に、なぜあせもができてしまうのか。
寒いかな…と思うと服を着こみ寒さ対策をしますよね。
はじめは良いけれど、外で動き回ったりしているとだんだん暑くなってきます。
しかし、上着を持つのが邪魔くさいと脱がずにそのままにしているという方、多いのではないでしょうか。
寒い外ではコートを着て、店内に入っても脱がずにそのまま…なんて人も多いのではないでしょうか。
特に子供の場合、親が寒くないようにとどうしても多めに着せてしまったり、コートを着たまま外で走り回るなんてことも。
じんわりかいた汗は、拭き取らずにそのままにしておくと、肌に残された状態になります。
その汗が刺激となり、炎症を起こし、かゆみとなって症状があらわれます。秋冬は、夏場と違い、空気の乾燥も手伝ってますますかゆくなってしまう可能性が高くなります。
空気の乾燥は、肌への影響だけでなくウイルスなども活発になって病気になってしまう可能性も高くなるので、部屋の湿度調節をしっかりすることが大切です。
一般的に快適だと感じる部屋の湿度は40~60%だと言われています。
湿度が40%以下になると、喉の粘膜の防御能力が低下するだけでなく、肌のバリア機能も低下し、肌の水分が失われやすくなってしまいます。
気温が低いことで血行も悪くなり、皮脂などの分泌も減少し、皮脂膜も十分に形成されなくなることで、肌がつっぱったり、カサカサして白い粉を吹いたり、赤くなりかゆみが起こるといったような肌トラブルが起こることになります。
暖房器具を使用する際は乾燥しやすくなるので、加湿を行うことも大切です。やりすぎると、逆に結露ができやすくなり、カビの原因となるので注意しましょう。
寒い時期の乾燥は、放っておくと様々な体調不良を引き起こすので、健康のためにも部屋の湿度を適度に保ち、快適に過ごせるようにしたいですね。
あせもを予防するためには
あせもは、なにより予防することが大切です。あせも予防の基本は、汗をかいたらこまめに拭き取り、帰宅後はシャワーを浴るなど、肌を清潔に保つことです。
あせもを予防する日常でのケア
- 通気性や吸湿性のいい下着を着る
- 汗をかいたらシャワーを浴びる
- 保湿ケアをする
- 高温多湿の環境を避ける
できるだけ汗で濡れたままの状態が続かないようにしましょう。理想は、汗をかいたら着替えるのがいいですが、外出先などでは難しい場合は、通気性や吸湿性のいい下着やインナーなどを利用するのがいいでしょう。
あせもは、汗をそのまま放置することで、皮膚の表面に汚れが溜まり汗管を詰まらせることが原因です。汗をかいたら、シャワーを浴びて、皮膚を清潔を保つようにします。また、外出先などでは、こまめに汗をふきとる習慣をつけましょう。
肌だ乾燥すると皮膚のバリア機能が低下してあせもができやすくなります。シャワーや入浴後には特に、肌の乾燥を防ぐために保湿剤を塗り、肌の潤いを保つようにしましょう。
人が夏に汗をかくのは自然なことです。しかし、多量の汗をかき続けるのはあまりよくありません。できるだけ、日差しの強い日中は外出を控え、屋内では、我慢せずにエアコンを適度に使用して、涼しい環境をつくりましょう。
内側からのケアであせも予防
実は、腸内環境がよくないとあせもを悪化させてしまうことがあります。腸内の悪玉菌が増えると、腸で有害物質が作られます。この有害物質は腸壁から血液中に吸収され、一部は汗として排泄されます。この汗が、汗管に溜まった状態になると、有害物質が皮膚を刺激して炎症を起こしやすくするのです。
逆に、腸内環境が良くなると、皮膚に必要な栄養が届けられやすくなり健康な状態が保てます。また、免疫力が高まることで、抗炎症作用や抗アレルギー作用につながり、あせもや湿疹などの皮膚トラブルを軽減します。このように、あせも予防にはからだの内側、特に腸内環境を意識することも大切です。
まとめ
夏の首周りのしつこいかゆみは「あせも」かもしれません。あせもの原因は「汗」です。最近、汗をかいて放っておいたことはありませんか?あせもになったら、まずは掻かないことが大切です。そして、またあせもが再発しないためにも、あせもを予防することが大切です。あせも予防のひとつとして、腸内環境をよくすることをお伝えしましたが、あせもだけでなくアトピーなどにも、内側のケアはとても重要です。腸内環境はすぐに改善されものではなく、日頃から意識して腸にいい生活を続けることが大切です。できることから少しずつ始めてみましょう。