便秘や下痢をはじめ、さまざまな効果が期待され、様々なヨーグルトや乳酸菌飲料が販売されていますが、自分に合う乳酸菌は人それぞれ違います。大事なことは、自分の腸の善玉菌を増やすこと。今回は、栄養学や日本の食文化の観点から、日本人と相性のいい乳酸菌についてとことん考えていきます。
栄養学と日本の食文化
栄養学とは、食品の持つ栄養素やその働きについて研究する学問のこと。人が成長し、健康に生活していくためには、どのような栄養素が必要で、その栄養素はどのような食品から摂取すればいいのかを学び、さらに未知のことについて研究していくことが栄養学の基本です。
健康長寿の国「日本」の食文化
国民の平均寿命は、国民の健康度の目安のひとつです。日本人の平均寿命は、昭和初期には男女ともに50歳に達していなかったのですが、2008年には男性79.29歳、女性86.05歳と飛躍的に延びました。
日本人の平均寿命が延びた理由には、乳児死亡率の減少や医療技術の進歩、社会経済の発展によって安全で暮らしやすくなった背景などがありあます。
特に、日本が世界屈指の長寿国になれたのは、日本の食文化が大きいと考えらています。日本食(和食)は、日本人になじみの深い食材を用いて整えられた、伝統的な主食、主菜、副菜がそろった食事のことで、日本の特徴的な食事様式は「日本型食生活」と呼ばれます。世界的にも評価が高い日本食の特徴としては、四季折々の旬の食材を使い、素材の味を生かした薄口の味付け、そして繊細な盛り付けのこの3つがあります。
「日本型食生活」とは、昭和50年代ごろの食生活のこと。ごはんを主食としながら、主菜・副菜に加え、適度に牛乳・乳製品や果物が加わった、バランスのとれた食事です。日本が世界有数の長寿国である理由は、こうした優れた食事内容にあると国際的にも評価されていました。
引用元:農林水産省ホームページより
国内で生産できるお米と、近海でとれる魚介類や海草類、大豆、野菜・果実類、牛乳など、様々の食材を組み合わせた「日本型食生活」は、小麦やと畜肉に依存した「欧米型食生活」に比べて、低脂肪、低カロリーでエネルギー摂取が過剰になりにくく、栄養面でのバランスがとれ健康保持に望ましいものとされています。
健康な身体づくりには「腸」が大事
食事から健康な身体がどう作られるのかと考えたときに、着目すべきが「腸」です。
食事とは、食べ物を消化管で分解し体に取り込むこと。消化管は食道から胃、腸へと続き、肝臓、膵臓などが関わっていますが、その中でも、腸は栄養を吸収し不要なものを排泄する「代謝」の中心的な役割をしています。
人は、植物とは違って体内でエネルギーやビタミンを作ることができないため、食事を通じて栄養を摂る必要があります。栄養を吸収する腸は、「最も原始的な臓器」と言われ、脳や他の消化管よりも早く作られたそうです。
腸には、口から取り入れたものが体の栄養になるか、害を及ぼすかを判断する「免疫機能」が備わっていて、体に必要なものであればスムーズに代謝され、体に害になると判断されると代謝が滞り不快な情動を感じます。この情動が、生物が進化していく中で人の心や感情の母体となったと考えられています。ストレスで下痢になったり、気力が低下するのはそのためだとも考えれています。
腸は食事からから栄養を吸収すると同時に心にも影響を与え、人にとってとても重要な臓器だということがわかります。そんな、腸の中には1000種類以上、100兆個以上もの腸内細菌が存在し、腸内環境を良い状態にしてくれています。そんな腸内細菌にも、適切な栄養素が必要です。
日本人の腸内環境と乳酸菌
腸内細菌は、消化吸収を助け体に有益な働きをする「善玉菌」と、増えすぎると腸内に炎症を起こし体の悪い影響を与える害になる「悪玉菌」、どちらにも属さず優勢な方に見方する「日和見菌」と、大きく3種類に分けられ、それらがバランスを取りながら共存しています。
腸内で善玉菌の活動が活発になれば腸内環境が良くなり、栄養が効率良く吸収され排泄もスムーズになります。また、体調が維持しやすく心身も安定します。そんな健康の土台ともいえる腸内環境を良くするためには、善玉菌を活性化する食べ物を積極的に摂る必要があります。
善玉菌の栄養は「繊維」と「糖」
善玉菌のエサとなるのは、根菜や海藻類、玄米や胚芽米、雑穀などに含まれる炭水化物です。炭水化物は、糖質と食物繊維に分けられますが、米や小麦は精製することで食物繊維が失わてしまいます。
そのため、理想はなるべく精製されていないものを摂ることがおすすめです。精製していない玄米には胚芽やぬかが残り、その中には食物繊維だけでなく、代謝に必要なビタミンやミネラルも多く含まれています。
穀類以外にも、乳酸菌が含まれるぬか漬けや味噌、悪玉菌の働きを抑える納豆菌を含む納豆など、腸内環境を良くする菌を多く含む発酵食品もおすすめです。精製していない穀類や根菜、海藻、味噌、納豆など、これらは日本人が昔からが当たり前のように口にしてきた食べ物であり、このことからも日本の食文化は、腸に優しく体の健康を維持する食事だったことがわかります。
腸内の善玉菌を増やす方法
腸内の善玉菌の割合を増やす方法には大きく2つあり、腸に有益な作用をもたらす微生物をを直接摂取する「プロバイオティクス」と、善玉菌のエサとなる栄養源を摂取する「プレバイオティクス」があります。
プロバイオティクスに代表されるものとしては、善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌などがあります。一方のプレバイオティクスは、善玉菌を増殖させたり活性化したりとプロバイオティクスの働きを助ける成分のことです。代表的な成分としては、難消化性オリゴ糖や食物繊維などがあります。
プロバイオティクスやプロバイオティクスについて、さらに詳しい内容は以下の記事に書いているので、ぜひこちらの記事もお読み下さい。
この記事を読んでいる方の中にも、乳酸菌飲料やヨーグルトなどで積極的に善玉菌を直接摂取している方も多いのではないでしょうか。しかし、乳酸菌であればどれでもいいというわけではなく、「ある研究では、日本人の腸には植物性乳酸菌のほうが合うという結果」が報告されています。この理由には、日本の食文化が関係しているとされています。
日本人と相性のいい進化系乳酸菌
もともと日本人は縄文時代の頃から植物性の食材を中心とした食事を摂っていて、肉食にはあまり依存していませんでした。穀物を含めた野菜と魚介類に発酵食品が加わったのが日本食の基本で、日本人の体はこうした食事に適応していきました。日本人が牛や豚などの畜肉を食べるようになったのは明治以降。そのため、欧米人に比べると肉食に適応していない面があります。
日本人とヨーグルトの歴史
乳酸菌といえば、ヨーグルトをイメージする方も多いのではないでしょうか?
実は、ヨーグルトは昔の日本ではかなり使われて、平安時代はヨーグルトを朝廷に納めないと罰せられるほどでした。しかし、ヨーグルトはどうしても日本人には合わなくて、鎌倉時代の中期に全滅していまいました。その代わり出てきたのが納豆や味噌などです。
その理由は、栄養学でもまだ解っていないことが多いのですが、日本人に豚肉やヨーグルトが合わなかったのは確かことです。このように、日本人が2000年以上もの間、ずっとふるいにかけてきたものが日本食なのです。
乳酸菌には、牛乳など動物性のものをエサに発酵している「動物性乳酸菌」、漬物や大豆など植物性のものをエサに発酵してる「植物性乳酸菌」の大きく2種類あります。ヨーグルトに含まれている乳酸菌は、動物性の乳を発酵させたものになるので動物性乳酸菌になります。
日本人は、古くから味噌や漬物などの植物性の発酵食品を食べてきたと歴史が長いことから、植物性乳酸菌の方が相性がいいと考えられているのです。その中でも特に、お米由来の乳酸菌であるLK-117は日本人に適した進化系乳酸菌として、菊正宗では研究開発に注力し続けています。
まとめ
人の体質を決める要素は遺伝的なものもありますが、生活環境に影響を受けることも多いです。分かりやすい例では、牛乳を飲んでお腹を壊しやすい人とそうでない人、アレルギーになりやすい人とそうでない人など、人それぞれです。
食べ物の栄養価は、食べ物に含まれる栄養素やカロリーなどではかることはできますが、それはひとつの目安にすぎません。この栄養が体に良いと聞いたからというだけで、自分に合うかどうかはわかりません。相性を判断するうえで、日本の食文化から考えることはとても重要なことです。まずは、健康な身体づくりをするためにも、自分の腸にいい食事は何かを考えていくことから始めてみましょう。