増え続ける子どものアレルギー、その背景とは?
近年、私たちの子どもの間で、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーといったアレルギー性体質を持つお子さんが増え続けているのをご存知でしょうか? 環境省の調査でも、子どものアレルギー疾患の有病率は年々増加傾向にあり、多くの保護者が原因や対策に頭を悩ませています。
かつては「体質だから仕方ない」と諦められがちだったアレルギーですが、最新の研究では、その発症に私たちの生活環境や食生活の変化、そして意外なことに「腸内環境」が深く関わっていることが明らかになってきています。
このコラムでは、なぜ現代の子どもたちにアレルギーが増えている背景や「アレルギーマーチ」と呼ばれる症状の進行パターン、さらには免疫システムの鍵を握る腸内環境がアレルギー体質にどう影響するのかを、最新の科学的知見を交えて詳しく解説します。お子さんのアレルギー体質でお悩みの方、アレルギーの根本的なメカニズムを知りたい方は、ぜひこの先をお読みください。未来のお子さんの健康な毎日を支えるヒントが、きっと見つかるはずです。
なぜ現代の子どもにアレルギーが増えているの?「衛生仮説」とは
よくある質問:子どものアレルギーが増えているのはなぜ?

「なぜ現代の子どもにはアレルギーが多いの?」
過去数十年間でアレルギー性体質(鼻炎、皮膚炎、食物アレルギーなど)の方が世界的に増えていますが、これは生活環境や食生活の変化が大きく影響していると考えられています。この現象を説明する考え方の一つに「衛生仮説」があります。
これは、生まれてすぐの時期に、様々な微生物と触れ合う機会が少ないと、アレルギー性体質になりやすいというものです。現代の清潔すぎる環境や感染症が減ったこと、それに伴って腸内細菌の種類が減ったことが、アレルギー性体質が増えている一因ではないかと考えられています。
アレルギーマーチと乳幼児期の「クリティカルウィンドウ」
よくあるご質問:アレルギーの進行について

「アレルギーマーチ」って何?
お子さんのアレルギー症状は、「アレルギーマーチ」と呼ばれる典型的なパターンで進行することがあります。これは、多くの場合、アトピー性皮膚炎が最初に現れ、その後、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、そして最終的に喘息へと症状が移っていくモデルです。

「乳幼児期の腸内環境がアレルギーに影響するって本当?」
はい、本当です。
特に、生まれてから乳幼児期は、腸内細菌の種類が決まる「クリティカルウィンドウ(決定的な期間)」と呼ばれており、この時期の腸内環境が、その後のアレルギー性体質のリスクに非常に大きな影響を与えることが分かっています。
アレルギーマーチのメカニズム
アトピー性皮膚炎によって皮膚のバリア機能が低下すると、アレルゲンが体内に入りやすくなり、それがアレルギー反応を引き起こすことがあります。その後、免疫細胞が皮膚に戻ってアトピー性皮膚炎を悪化させ、さらに腸、肺、鼻へと炎症が広がることで、様々なアレルゲンに対する体の反応が強くなり、アレルギーマーチが誘発されると考えられています。
腸内細菌叢の「クリティカルウィンドウ」の重要性
特に、生まれてから乳幼児期は、腸内細菌の種類が決まる「クリティカルウィンドウ(決定的な期間)」と呼ばれており、この時期の腸内環境が、その後のアレルギー性体質のリスクに非常に大きな影響を与えることが分かっています。
また、出産方法(自然分娩か帝王切開か)や授乳方法(母乳かミルクか)、そして早期の抗生物質の使用などが、この時期の腸内細菌の種類に影響を与え、それが長期的にアレルギー性体質へのなりやすさを決める要因となる可能性も指摘されています。
このように、生まれた時の微生物との出会いが、その後の免疫システムの「学習」の基礎となり、アレルギーマーチの出発点となる可能性があるという考え方は、アレルギー性体質を予防する上で、生まれる前後からの働きかけが非常に重要であることを示唆しています。
Th1細胞とTh2細胞のバランスがアレルギーのカギ!
私たちの免疫システムは、大きく分けて2種類のヘルパーT細胞のバランスによって適切に機能しています。
- Th1細胞:ウイルスや細菌などの異物を攻撃する細胞性免疫を担います。
- Th2細胞:アレルギーの原因となるIgE抗体という物質の産生を促し、アレルギー反応を促進します。
アレルギー性体質の場合、このTh2細胞の活動が過剰になることが深く関わっていると考えられています。腸内細菌のバランスは、このTh1細胞とTh2細胞の活動のバランスを調整し、アレルギー性体質のような過剰な免疫反応を抑える上で重要な役割を果たすことが研究で示されています。
プロバイオティクスとプレバイオティクスのアレルギーへの可能性
腸内環境を直接的にサポートする手段として、プロバイオティクス(生きた有益な微生物、例えばヨーグルトの乳酸菌など)とプレバイオティクス(有益な微生物の増殖を促進する食品成分、例えば食物繊維など)の摂取が注目されており、様々なアレルギー性体質に対する有効性が研究されています。
プロバイオティクスとプレバイオティクスって何?
プロバイオティクスとは
プロバイオティクスは、摂取することで健康に良い働きをする“生きた微生物”のことです。主に乳酸菌やビフィズス菌が該当し、ヨーグルトやキムチ、ぬか漬け、納豆などの発酵食品に多く含まれます。腸内環境を整え、免疫機能のサポートなどの効果が期待されます。
語源は「共に生きる」という意味のプロバイオシス(probiosis)です。
プロバイオティクスとは
プレバイオティクスは、腸内の善玉菌のエサとなる栄養素で、主にオリゴ糖や食物繊維が該当します。菌そのものではなく、善玉菌を育てる役割を持ちます。
キャベツやゴボウ、豆類、いも類、きのこ、海藻、果物などに多く含まれています。
両者の関係
- プロバイオティクス=善玉菌そのもの(生きた菌)
- プレバイオティクス=善玉菌のエサ(育てる栄養)
深く解説:アレルギー性体質へのプロバイオティクス研究の現状
アレルギー性鼻炎に対する可能性
アレルギー性鼻炎に対する可能性
プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせた摂取が、季節性アレルギー性鼻炎の方の鼻症状を和らげたり、体の免疫バランスを改善したりする可能性が、臨床試験で示されています。
アトピー性皮膚炎に対する研究の現状
アトピー性皮膚炎に対するプロバイオティクスの効果については、研究によって様々な結果が出ており、まだはっきりと確立されていません。
可能性を示唆する研究例
特定のビフィズス菌や乳酸菌を摂取することで、アトピー性皮膚炎のリスクが減ったり、症状が改善したりしたという報告もあります。
生きた乳酸菌と死んだ乳酸菌:免疫への働き
「生きた菌が良い」という従来の考え方は変わりつつあります。実は、死んだ乳酸菌(殺菌乳酸菌)にも、免疫機能に直接働きかける力があることが分かってきたんです。
死んだ乳酸菌(殺菌乳酸菌)の免疫への働き
加熱殺菌された乳酸菌は、腸内で増殖はしませんが、その菌体成分が腸管の免疫細胞に直接働きかけます。これにより、免疫のバランスを調整したり、過剰な免疫反応を落ち着かせたりするなど、特定の機能を発揮することが研究で示されています。生きた菌では得られにくい、安定した免疫調整作用が期待できる点が注目されています。
生菌 | 死菌(加熱殺菌) | |
---|---|---|
働き | 腸内環境を整える 腸内を酸性に保ち腐敗菌の動きを抑制する |
小腸で免疫を高める 大腸では腸内細菌叢の餌になる |
胃酸・腸液の影響 | 影響を受けてしまう 胃酸や腸液でほとんどが死滅 |
影響を受けない 効果が安定している |
免疫調整において「死んだ菌」が注目される理由
免疫システムは非常に複雑で、そのバランスが崩れるとアレルギーや体調不良につながることがあります。生きた菌が腸内環境を整えることで間接的に免疫をサポートするのに対し、死んだ乳酸菌は、その特定の成分によって、免疫細胞へより直接的かつ安定的に「指令」を出すことができると考えられています。
これは、生きた菌の増殖や定着に左右されず、菌体が持つ免疫賦活(ふかつ)作用や免疫調節作用を安定して発揮できるためです。特に、過剰な免疫反応を落ち着かせたり、必要な免疫応答を促したりする「免疫バランスの調整」において、特定の死んだ乳酸菌が非常に有効であるという研究結果が増えています。
このように、「生きた菌でなければ意味がない」という考え方は、もはや過去のものとなりつつあります。腸内フローラのバランスを整えることと、免疫機能への直接的な働きかけという点で、生きた菌と死んだ菌はそれぞれ異なる強みを持っているんです。
「腸内環境を整えたい」なら生きている菌
「免疫を高めたい」なら死菌
(参考文献:東京農工大学学術機関リポジトリ)
よくあるご質問:アレルギーの進行について

「プロバイオティクスやプレバイオティクスはアレルギーに効果があるの?」
プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせた摂取が、季節性アレルギー性鼻炎の方の鼻症状を和らげたり、体の免疫バランスを改善したりする可能性が、臨床試験で示されています。しかし、アトピー性皮膚炎など他のアレルギーへの効果については、研究によって様々な結果が出ており、まだはっきりと確立されていません。菌の種類(菌株)や量、個人の腸内環境によって大きく効果が異なるため、お子さんに合う菌を見つけることが大切です。
豆知識:実は「菌株特異性」が大切!
プロバイオティクスの効果は、摂取する菌の種類(菌株)や量、そして個人の腸内環境によって大きく異なります。全ての人に同じ効果があるわけではないため、お子さんに合う菌を見つけることが大切です。
菊正宗酒造の乳酸菌「LK-117」のアレルギーに対する可能性
菊正宗酒造は、350年以上の長きにわたり日本酒の「生酛づくり」を通して乳酸菌と深く向き合ってきました。その長年の研究の中で、食品機能性の権威である水野雅史名誉教授(元神戸大学大学院農学研究科)との共同研究により、特定の機能を持つ、ある乳酸菌「LK-117」が発見されました。
この「LK-117」の特長は、乱れた免疫バランス、特にアレルギー反応に関わるTh1細胞とTh2細胞のバランスに働きかけ、体の調子を整える力にあります。研究により、マクロファージに「IL-12」という物質の産生を誘導し、Th1細胞への分化を促す可能性が示唆されています。
「LK-117」は、お子さんのアレルギー性体質が気になる親御さんにとって、新しい選択肢となる可能性があります。長年の乳酸菌研究の積み重ねと科学的な根拠に基づいています。
今日からできる!アレルギー対策のための腸内環境ケア実践ガイド
アレルギー体質のお子さんのケアには、日々の生活の中で腸内環境を整える「腸活」がとても大切です。ここでは、腸内環境を「元気にする」ための考え方と具体的な実践法をご紹介します。
腸内環境を整える「腸活」の基本
バランスの取れた食事
腸内の善玉菌を増やすために、発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)や食物繊維が豊富な野菜、根菜、豆類、きのこ、海藻などを積極的に食事に取り入れましょう。特に日本の伝統的な食文化である「和食スタイル」は、様々な食材を少しずつ食べることで、多種類の腸内細菌に効率よく栄養を行き渡らせ、腸内細菌叢の多様性とバランスを整えるのに役立つと言われています。
食物繊維
腸を物理的に刺激し、ぜん動運動を活発にするだけでなく、腸内細菌によって発酵され、酪酸などの短鎖脂肪酸(SCFAs)が産生されます。これらは腸管バリア機能の維持や免疫の恒常性維持に不可欠です。
発酵食品
ぬか漬けの乳酸菌は腸内の善玉菌を増やし、納豆の納豆菌は善玉菌のエサとなりその働きを助けるなど、日本の発酵食品は腸内ケアに優れた効果を持つ「日本人の整腸剤」とも言える存在です。
規則正しい生活習慣
適度な運動と十分な睡眠は、免疫力を高める上で非常に重要です。お子さんが質の良い睡眠を確保できるよう、生活リズムを整えましょう。
ストレス軽減
ストレスは腸内環境を乱す原因の一つです。お子さんが安心して過ごせる環境づくりを心がけましょう。
腸内環境から、お子さんのアレルギー体質を考える
アレルギー性体質のお子さんが増えている現代において、腸内環境の健全性がその対策に非常に深く関わっていることがお分かりいただけたでしょうか。
アレルギー症状が進行する「アレルギーマーチ」や、乳幼児期の「クリティカルウィンドウ」における腸内細菌叢の形成が、その後の体質に大きな影響を与えることが示唆されています。腸内環境は、単なる消化吸収の場ではなく、全身の免疫システムの「司令塔」として機能し、その多様性とバランスが免疫細胞の機能、特に免疫バランスの調整に不可欠な役割を担っています。
食生活の改善、特に和食の多様性や食物繊維、発酵食品の積極的な摂取が基本的なアプローチとして重要です。また、プロバイオティクスやプレバイオティクスによる補給は有望な介入手段ですが、その効果は菌株によって異なり、体質や個人の腸内環境によっても差があるため、今後のさらなる研究が期待されます。
お子さんのアレルギー体質改善には、時間がかかることもあります。しかし、日々の小さな腸活が、未来の元気な体を作る第一歩となります。この特別な乳酸菌「LK-117」が、お子さんの健やかな成長とアレルギーケアをサポートするパートナーとなれることを願っています。
「うちの子のアレルギー、腸からアプローチできるの?」と感じた方は、ぜひ一度、この特別な乳酸菌「LK-117」について、詳しく調べてみてください。お子さんの健やかな成長のためのヒントがそこにあるかもしれません。