現代の子どもたちに増えるアレルギーの現状
アレルギーは、食物アレルギーだけでなく、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎など、多岐にわたります。厚生労働省の調査によると、0歳~14歳の子どもの約40%が何らかのアレルギーを持っているとされ、都市部に住む4歳以下の子どもに限ると、その割合は51.5%と2人に1人にも達しています。
赤ちゃんから発症するアレルギーとその特徴
乳幼児期に多いアレルギーには、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などがあります。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎は0歳児でも発症する可能性がある一方、気管支喘息やアレルギー性鼻炎は1歳以降から発症することが多いとされています。
- 食物アレルギー:
特定の食品を摂取することで引き起こされるアレルギーです。患者数は過去10年間で約1.7倍に増加し、その50%が0〜1歳で発症しています。 - アトピー性皮膚炎:
食物やダニのアレルゲン、汗や乾燥といった物理的刺激により発症します。この30年間で患者数は5〜10倍に増加しているという報告もあります。 - 気管支喘息・アレルギー性鼻炎:
主に空気中に浮遊するハウスダストや花粉が原因となって発症します。特にダニの死骸や糞、分泌物などが原因となることが多く、皮膚から侵入してアトピー性皮膚炎を引き起こすこともあります。
成長とともに出現するアレルゲンと症状
アレルギーの症状は、年齢とともに変化する傾向があります。多くの場合は、赤ちゃんのときに皮膚の湿疹や下痢が落ち着いた後、気管支喘息が始まり、やがてアレルギー性鼻炎や花粉症を発症するという経過をたどると言われています。
これは、アレルギーの原因となるアレルゲンが、成長段階で変わるためです。0歳児では食物がアレルゲンになりやすいですが、成長するにつれて吸い込む機会が増えるダニや花粉がアレルゲンとなることが増えてきます。
子どものアレルギーと免疫:カギを握る腸内環境
子どものアレルギー発症には、遺伝的要因だけでなく、住環境や食環境といった生活環境の変化が大きく影響していると考えられています。中でも、免疫細胞の約7割が存在する腸内環境は、アレルギー体質を考える上で非常に重要な要素です。
免疫システムは、外部の異物と闘う「Th1細胞」と、アレルゲンと闘う「Th2細胞」のバランスによって保たれています。このバランスが乱れ、Th2細胞が優位になると、アレルギー反応を引き起こすIgE抗体が過剰に作られやすくなると言われています。腸内環境を整えることは、この免疫バランスをサポートし、正常な状態に戻すアプローチとして期待されています。
専門家が注目する「乳酸菌」LK-117の研究
私たちの腸内に棲む善玉菌を増やすことは、腸内環境を整える有効な手段の一つです。近年、バイオジェニックスという概念に基づき、腸内フローラを介さず直接生体に働きかける乳酸菌の研究が進んでいます。菊正宗と神戸大学が共同研究で発見した「LK-117乳酸菌」もその一つです。研究では、免疫細胞であるマクロファージに作用し、Th1細胞を増やす働きを持つ物質「IL-12」の産生を促すことが示唆されています。
今日からできる!子どものアレルギー予防のヒント
アレルギーは、必ず予防できるものではなく、同じ親から生まれた兄弟でも発症する子としない子がいるように、体質や生活習慣、生活環境など様々な要因が複雑に絡み合って決まると考えられています。しかし、少しでもアレルギー発症のリスクを減らすための予防策はあります。
赤ちゃんには丁寧なスキンケアを
食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の子どもは、皮膚からアレルゲンが侵入することで、アレルギーを引き起こしやすくなることがわかってきています。赤ちゃんの皮膚はバリア機能が弱く乾燥しやすいため、生まれたときから毎日保湿剤を塗り、スキンケアを習慣化することが大切です。
生活空間を清潔に保つ
ダニは布団やカーペット、ソファなど、生活空間のいたるところに潜んでいます。特に、3歳までにダニアレルゲンに触れる機会が多いと、将来的に呼吸機能の低下やアレルギーの発症リスクが高まることが示唆されています。こまめな掃除や換気を心がけ、ダニの繁殖を抑えることが重要です。
バランスの取れた食生活と生活習慣
妊娠中や授乳中に特定の食品を避けても、赤ちゃんのアレルギー予防には繋がらないとされています。偏食を避け、バランスの良い食生活を心がけましょう。また、規則正しい生活や十分な睡眠、適度な運動を意識することで、体全体の免疫バランスを整えるサポートになります。
もし子どもがアレルギーを発症した際は、まずは専門医に相談し、アレルギーの原因を特定することが大切です。その子に合った生活環境を整えてあげることが、症状をコントロールしていく上で最も重要だと言えるでしょう。