【結論】日本皮膚科学会の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024』では、乳酸菌などのプロバイオティクスについて、症状改善は「全ての患者に特定の製品を一律に推奨することはできない」、発症予防は「推奨しない」と評価されています。ただし、菌の種類や組み合わせによっては症状スコアが改善した研究もあり、「効かない」と決めつけられているわけではありません。治療の中心は皮膚科での診療とスキンケアで、乳酸菌は生活の中の補助的な選択肢として、過度な期待をせずに考えるのが現実的です。
検証:菊正宗酒造 乳酸菌研究開発チーム
研究成果一覧(LK‑117等)
菊正宗酒造総合研究所
本記事は「アレルギーと腸内環境まとめ」の詳細解説です。
「アトピーは腸が関係している」「乳酸菌で肌が良くなるらしい」——こうした話を目にして、乳酸菌や腸活を試そうか迷っている方は少なくありません。一方で、「結局、医学的には効くの?」という疑問に正面から答える情報は多くありません。
本記事では、日本皮膚科学会の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024』(日本皮膚科学会雑誌134巻11号, 2024年)の記載をもとに、乳酸菌とアトピー性皮膚炎の関係で「今分かっていること」と「まだ分かっていないこと」を整理します。
【記事の監修者】
菊正宗酒造乳酸菌研究開発チーム
本記事は「菊正宗酒造乳酸菌研究開発チーム」による監修のもと作成されています。当チームは、神戸大学との共同研究(アレルギー抑制モデルの検討)や、日本生物工学会 技術賞受賞研究を基盤に、乳酸菌と免疫の関係を継続的に検証しています。
【研究開発に携わる専門家】
米由来乳酸菌「LK-117」の研究開発には、大阪青山大学 教授(神戸大学 名誉教授)水野 雅史 先生が関わっています。水野先生は、日本生物工学会「生物工学技術賞」、日本食品科学工学会「学会賞」を受賞されています。
詳しい研究実績:[大阪青山大学 教員紹介] / [researchmap]
【研究の根拠】
乳酸菌の免疫調節作用については、期待できる点と、まだ分かっていない点の両方を正確に伝えることが重要と考えています。
研究の詳細:研究成果一覧(学会発表・論文)
※本記事は治療を目的としたものではありません。アトピー性皮膚炎の治療は、必ず皮膚科医の指示に従ってください。
ガイドラインの結論:症状改善・発症予防の評価
ガイドライン2024には、プロバイオティクス(摂取することで体に良い働きをする生きた微生物)・プレバイオティクス(その餌になる成分)に関する2つの設問(CQ)があります。
| 設問 | CQ37:症状改善に有用か | CQ38:発症予防に有用か |
|---|---|---|
| 推奨の内容 | 全ての患者に、特定のプロバイオティクスやプレバイオティクスを一律に推奨することはできない | 発症予防目的での投与は推奨しない |
| エビデンスレベル | A | B |
「推奨しない」「一律には推奨できない」は、「効果がないと証明された」という意味ではありません。ガイドラインは、研究の数や結果のばらつき、対象・菌種・投与方法の違いを踏まえ、「現時点では診療として一律に勧める段階にはない」と評価しています。
症状改善:研究で分かっていること
ガイドラインの解説によると、症状改善についての研究結果は次のように整理されています。
- 全体として一貫していない:2018年のコクランレビュー(39件のランダム化比較試験)では、プロバイオティクスで痒み・睡眠障害・QOLの有意な改善は認められず、重症度スコア(SCORAD)はわずかな改善にとどまりました。その後の複数のメタ解析ではSCORADの有意な改善が報告されています。
- 小児では結果が混在:効果が認められた試験と、認められなかった試験の両方があります。
- 成人・複数菌の組み合わせではSCORADの改善を認めた試験がある:成人を対象にした試験や、複数のプロバイオティクスを投与した試験では、SCORADの改善が報告されています。
- 乳児への効果は概して低い:ガイドラインは「乳児への効果は概して低い」とまとめています。
- 効果の高い菌と低い菌がある:どの乳酸菌でも同じ結果になるわけではなく、菌株によって差があることが示唆されています。複数の異なるビフィズス菌や乳酸菌を混合したものが効果的との傾向も記載されています。
- 評価時期:効果の評価は、4週・8週・12週で行われた研究が多いとされています。
菌株ごとの違いについては、複数の乳酸菌を同時に摂ってもいい?併用の考え方と注意点も参考になります。
発症予防:研究で分かっていること
20件以上のランダム化比較試験があり、複数のシステマティックレビューが報告されています。ガイドラインは、結果を次のように整理しています。
- 多くのレビューでは、妊娠中の母親と、出生後の乳児の両方にプロバイオティクスを投与した場合に、乳幼児のアトピー性皮膚炎を予防する効果があると結論づけています。
- 一方で、出生後の乳児のみへの投与や、乳酸菌の1菌種のみの投与では、効果なしとする文献もあります。
- 乳児期の発症予防効果があるとされた試験でも、長期的には効果が消失したという報告があります。
- プレバイオティクス単独については、予防効果ありとする試験もある一方、レビューでは予防効果なしと結論づけられています。
そのうえでガイドラインは、「対象、時期、菌種など具体的な方法についてはさらなる検討が必要であり、現時点では診療現場で妊婦や乳児に推奨することは時期尚早」としています。妊娠中・乳児期の乳酸菌については、牛乳アレルギーと乳酸菌の記事も参考にしてください。
アトピーと腸内細菌の関係
ガイドラインでは、アレルギー疾患の患児と健常児の腸内細菌を比べた研究で、アレルギー疾患の患児では乳酸菌が有意に減少していたという報告が紹介されています。腸内細菌が免疫応答に深く関わっていることは多くの研究で示されており、腸内環境とアトピーの関連は研究が続けられています。
ただし、「腸内に乳酸菌が少ないこと」と「乳酸菌を摂れば症状が改善すること」は別の話です。関連が報告されていることと、摂取で治療効果が得られることは、分けて考える必要があります。
乳酸菌を試すなら:現実的な進め方
ガイドラインの評価を踏まえると、乳酸菌は「治療の代わり」ではなく、日常の食生活で取り入れる補助的な選択肢と位置づけるのが現実的です。
① 皮膚科での治療・スキンケアを優先する
症状が出ているときは、自己判断で乳酸菌に切り替えたり、塗り薬を中断したりせず、皮膚科医の指示に従ってください。
② 1種類ずつ、4〜12週を目安に観察する
研究でも効果の評価は4週・8週・12週が多いことから、まず1種類を続けて、肌の状態(かゆみ・睡眠・皮疹の範囲)をメモすると、自分に合うかどうか判断しやすくなります。複数を同時に始めると、どれが影響したか分からなくなります。
③ 食物アレルギーがある場合は原材料を確認する
ヨーグルトなどの乳製品、納豆などの大豆製品は、食物アレルギーがある方には使えません。主治医に確認のうえ、原材料表示を必ず確認してください。
④ 悪化したら中止して受診する
摂取後に皮疹の悪化や、お腹の不調が出たときは中止して、医師に相談してください。
風邪や季節の変わり目の悪化については、子どものアレルギー・アトピー体質サポート!風邪で負けない常識もご覧ください。
FAQ:よくある質問
- アトピーに乳酸菌は効きますか?
- 日本皮膚科学会のガイドライン2024では、症状改善について「全ての患者に特定のプロバイオティクスを一律に推奨することはできない」と評価されています。菌の種類や組み合わせによっては症状スコアが改善した研究もありますが、結果は一貫していません。
- 乳酸菌でアトピーを予防できますか?
- ガイドライン2024では、発症予防を目的としたプロバイオティクスの投与は推奨されていません。妊娠中の母親と乳児の両方に投与した研究で予防効果ありとする報告がある一方、乳児のみ・1菌種のみでは効果なしとする文献や、長期的に効果が消えたとする報告もあります。
- 腸活でアトピーは治りますか?
- 腸活だけでアトピー性皮膚炎が治るとは言えません。治療の基本は皮膚科での診療とスキンケアです。腸内環境を整える食生活は、補助的な生活習慣の一つとして考えてください。
- どのくらい続ければ判断できますか?
- 研究では、効果の評価は4週・8週・12週で行われたものが多くなっています。まず1種類を数週間続け、かゆみや睡眠、皮疹の状態を記録して判断すると分かりやすくなります。
- 赤ちゃんや子どもにも乳酸菌を与えてよいですか?
- 乳児への効果は概して低いとされ、発症予防目的での推奨もされていません。食品として与える場合も、月齢や体質、食物アレルギーの有無によって注意が必要なため、小児科・皮膚科の医師に相談してください。
まとめ
アトピー性皮膚炎と乳酸菌については、ガイドライン上「症状改善は一律に推奨できない」「発症予防は推奨しない」という評価で、研究の結果にはばらつきがあります。一方で、菌の種類や組み合わせによっては症状スコアが改善した研究もあり、今後の研究が期待されている分野です。過度な期待も、過度な否定もせず、皮膚科での治療を軸に、無理のない範囲で生活習慣の一部として取り入れましょう。
アレルギーと腸内環境については、以下で詳しく説明しております。
▶ アレルギーと腸内環境まとめ|子どもの予防・乳酸菌の最新知見
▶ 乳酸菌・プロバイオティクス完全ガイド|効果・選び方・安全性
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▶ 妊娠後期の乳酸菌摂取、子どものアトピー予防になる?
▶ 腸内細菌でアレルギー予防できる?専門医の見解
本記事は研究結果や一般的な知見をもとにした情報提供を目的としており、医療行為や治療・予防を保証するものではありません。症状がある場合は皮膚科医にご相談ください。









