【結論】酪酸菌(らくさんきん)とは、腸内で食物繊維などを発酵させ「酪酸」という短鎖脂肪酸を作り出す菌の総称です。乳酸を作る乳酸菌、主に大腸で酢酸などを作るビフィズス菌とは、生み出す物質と役割が異なります。酪酸は大腸のエネルギー源になり、腸内環境や免疫の維持に関わることが報告されています。酪酸菌そのものを含む食品は「ぬか漬け」など限られますが、食物繊維をしっかり摂ることで、もともと腸にいる酪酸菌の働きを後押しできると考えられています。
検証:菊正宗酒造 乳酸菌研究開発チーム
研究成果一覧(LK‑117等)
菊正宗酒造総合研究所
整腸剤やサプリのパッケージ、腸活の記事で「酪酸菌」という言葉を見かける機会が増えました。乳酸菌やビフィズス菌はよく知られていますが、酪酸菌は何が違い、どんな働きをするのでしょうか。本記事では、菌の分類と食品の両面から整理します。
【記事の監修者】
菊正宗酒造乳酸菌研究開発チーム
本記事は「菊正宗酒造乳酸菌研究開発チーム」による監修のもと作成されています。
【研究開発に携わる専門家】
大阪青山大学 教授(神戸大学 名誉教授)水野 雅史 先生が研究開発に関わっています。
詳しい研究実績:[大阪青山大学] / [researchmap]
【研究の根拠】
腸内細菌が食物繊維を発酵して作る短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸)は、腸のエネルギー代謝や免疫調整に関わることが複数の研究で示されています。
研究の詳細:研究成果一覧
※本記事は治療を目的としたものではありません。
酪酸菌とは
酪酸菌とは、腸内で食物繊維やオリゴ糖などを発酵させ、「酪酸(らくさん)」という短鎖脂肪酸を主に作り出す細菌の総称です。特定の1菌種を指す言葉ではなく、クロストリジウム・ブチリカム(宮入菌)やフィーカリバクテリウム属など、酪酸を産生する複数の菌がここに含まれます。多くはヒトの大腸にもともと存在する常在菌です。
酪酸は大腸の粘膜細胞(大腸上皮細胞)の主要なエネルギー源になるとされ、腸のバリア機能や腸内環境の維持に関わることが報告されています。厚生労働省 e-ヘルスネット「腸内細菌と健康」
酪酸が体内でどう働くかは、短鎖脂肪酸の記事で詳しく解説しています。
乳酸菌・ビフィズス菌との違い
いずれも「善玉菌」に分類されますが、作り出す物質と主な生息場所が異なります。
| 菌の種類 | 主に作る物質 | 主な生息場所 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 乳酸菌 | 乳酸 | 小腸〜大腸、発酵食品中 | 種類が非常に多い。ヨーグルト・漬物・味噌などに広く含まれる |
| ビフィズス菌 | 酢酸・乳酸 | 主に大腸 | ヒトの大腸の善玉菌の大部分を占める。酸素を嫌う |
| 酪酸菌 | 酪酸 | 主に大腸 | 大腸のエネルギー源となる酪酸を作る。食品からは摂りにくい |
乳酸菌やビフィズス菌が作った乳酸・酢酸を、酪酸菌などが利用して酪酸を作る、という菌どうしの連係(クロスフィーディング)も知られています。1種類の菌だけでなく、腸内細菌全体のバランスが大切と考えられているのはこのためです。
乳酸菌とビフィズス菌の違いは、以下の記事で詳しく解説しています。
酪酸菌に期待される働き
研究で報告されている酪酸・酪酸菌の働きには、次のようなものがあります。いずれも「病気を治す」ものではなく、腸の健康を支える基礎的な役割です。
- 大腸の粘膜細胞のエネルギー源になる
- 腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌が増えにくい環境をつくる
- 腸のバリア機能(粘液層・タイトジャンクション)の維持に関わる
- 腸管の免疫細胞の働きの調整に関わることが報告されている
※これらは基礎研究や一部の臨床研究で示唆されている段階のもので、すべての人に同じ効果があることを保証するものではありません。
酪酸菌が多い食べ物・増やし方
酪酸菌そのものを含む食品は限られる
酪酸菌を生きた形で多く含む身近な食品は「ぬか漬け」がほぼ唯一といわれます。ぬか床には酪酸菌が存在し、ぬか漬け特有の風味の一部を担っています。ヨーグルトや納豆は乳酸菌・納豆菌が主体で、酪酸菌はほとんど含まれません。
「もともといる酪酸菌」を後押しする食べ方
酪酸菌は多くの人の大腸にすでに存在します。その働きを支えるには、エサになる発酵性食物繊維を摂ることが基本です。
- 水溶性食物繊維:大麦(もち麦)、オーツ麦、海藻、こんにゃく、熟した果物
- レジスタントスターチ:冷やごはん、冷製パスタ、いも類
- オリゴ糖:玉ねぎ、ごぼう、大豆、バナナ
発酵食品と食物繊維の取り入れ方は、以下の記事で詳しく解説しています。
▶ 腸活で健康!ヨーグルトではダメ?伝統発酵食品と乳酸菌の力
酪酸菌のサプリ・整腸剤について
酪酸菌を配合したサプリメントや市販整腸剤もあります。使う場合は用法・用量を守り、体質に合うかを確かめながら取り入れてください。合わないと感じたときの考え方は、次の記事で解説しています。
FAQ:よくある質問
- 酪酸菌と乳酸菌はどちらが良いのですか?
- どちらが優れているというものではなく、役割が異なります。乳酸菌は乳酸を、酪酸菌は大腸のエネルギー源になる酪酸を作ります。菌どうしが連係して働くため、特定の1種だけを重視するより腸内細菌全体のバランスを整える考え方が基本です。
- 酪酸菌はどんな食べ物に含まれますか?
- 生きた酪酸菌を多く含む身近な食品はぬか漬けがほぼ唯一です。ヨーグルトや納豆にはほとんど含まれません。もともと腸にいる酪酸菌を増やすには、大麦・海藻・オリゴ糖など発酵性食物繊維を摂ることが有効と考えられています。
- 酪酸菌のサプリや整腸剤は飲んだほうがいいですか?
- 必須ではありません。まずは食物繊維や発酵食品を含むバランスの良い食事が基本です。サプリや整腸剤を使う場合は用法・用量を守り、体質に合うか様子を見ながら取り入れてください。
- 酪酸菌を増やすと便秘や下痢に効きますか?
- 酪酸は大腸のぜん動運動や水分バランスに関わることが報告されていますが、便通の改善を保証するものではありません。症状が続く場合は自己判断せず医療機関に相談してください。
- 酪酸菌は腸に定着しますか?
- 外から摂った菌がそのまま長期間定着することは多くないと考えられています。継続的に食物繊維を摂り、もともといる酪酸菌が働きやすい環境を保つことが現実的です。
まとめ
酪酸菌は、大腸のエネルギー源になる酪酸を作る善玉菌の総称です。乳酸菌・ビフィズス菌とは作る物質が違い、菌どうしが連係して腸内環境を支えています。食品から直接摂るのは難しいため、発酵性食物繊維をしっかり摂り、腸にいる酪酸菌の働きを後押しすることが基本の考え方です。
乳酸菌全般の働き・選び方については、以下で詳しく説明しております。
▶ 乳酸菌・プロバイオティクス完全ガイド|効果・選び方・安全性
本記事は研究結果や一般的な知見をもとにした情報提供を目的としており、医療行為や治療を目的としたものではありません。症状がある場合は医師や専門家にご相談ください。









